斎藤 聡, 伝法 秀幸, 窪田 幸一, 藤山 俊一郎, 小林 正宏

Satoshi SAITOH, Hideyuki DENPO, Koichi KUBOTA, Shunichiro FUJIYAMA, Masahiro KOBAYASHI

¹虎の門病院肝臓センター, ²虎の門病院分院臨床検査部

¹Department of Hepatology, Toranomon Hospital, ²Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya

キーワード :

【目的】
従来，脂肪肝のBモード所見ではbright liverと肝腎コントラスト，深部減衰，脈管不明瞭化が重要な所見とされてきた．装置の進歩により，ペネトレーションの向上が図られ，この所見では十分な脂肪肝診断が困難になりつつある．また，いずれにせよ，主観的な評価である．これを客観的かつ半定量的な評価法として，Bモード画像から得られる脂肪化所見を検討した．Bモード画像のスペックルパターンの均質性を数値化するNLV（Normalized Local Variance：正規化局所分散）を用いて肝臓の脂肪化の程度を評価する．理想的なスペックルパターンが均一のときNLV=1になり，血管壁や線維化が解析ROIに含まれるとNLV＞1になるパラメータである．NLVは解析ROI内に微小ROI（以降sROI）を設置し，そのsROIのエコー信号の分散値をsROIの平均値で規格化したものである．
【対象と方法】
対象は各種慢性肝疾患231例．年齢28-91歳（中央値65歳），男女比は94:138．使用装置はAplio-i 800（東芝メディカルシステムズ）でプローブはPVI-475BX．右肋間より自由呼吸で，動画を記録し，太い脈管などの構造物を避けた部位が記録された画像から直径5cm程度の円形のROIを置き，内部のsROIを設定して3回計測し，中央値を求めた．Bモード検査にては脂肪化の有無として，bright liverと肝腎コントラスト，および胆嚢床付近のfocal fatty spareed areaの所見があるものを脂肪肝とした．PVI-475BXでshear wave elastography（SWE）も測定した．同時にフィブロスキャン502でCAP（controlled attenuation parameter）も測定し比較した．
【成績】
1.SWEで肝硬度6kPa以下での検討（n=181）：正常肝と脂肪肝との鑑別ではそれぞれ1.214±0.121，1.069±0.101であり，鑑別はカットオフ値1.080でAUROCは0.8309（p＜0.001）であった．2. CAPとの相関関係：全体ではr=-0.436（p＜0.001），肝硬度6kPa以下限定ではr=-0.557（p＜0.001）であった．3．CAPによる脂肪化のグレードを3段階に分類すると，NLVはS1：1.13，S2：1.06，S3：1.01と脂肪化が進行するとともにNLVの低下がみられた．
【結語】
NLVによる脂肪化評価はSWE低値では脂肪化を評価可能であるが，線維化進行例では限界がみられた．CAPとも負の相関関係を認めた．半定量性に関して，ある程度評価が可能であった．