Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道2

(S529)

小児期PSCのスクリーニングにUSは非常に有用である

Transabdominal ultrasound is useful in screening of pediatric primary sclerosing cholangitis

梶 恵美里, 余田 篤, 青松 友槻, 奥平 尊, 赤松 正野, 鹿毛 政義, 玉井 浩

Emiri KAJI, Atsushi YODEN, Tomoki AOMATSU, Takeru OKUHIRA, Masano AKAMATSU, Masayoshi KAGE, Hiroshi TAMAI

1大阪医科大学小児科, 2久留米大学病院病理部

1Department of Pediatrics, Osaka Medical College, 2Department of Pathology, Kurume University

キーワード :

【はじめに】
原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis: PSC)は,肝内外に多発性の狭窄を生じ,進行性の慢性胆汁うっ滞をきたす原因不明の肝胆道疾患である.潰瘍性大腸炎(UC)をはじめ炎症性腸疾患(IBD)を高率に合併する.当科での5例の小児のPSCの初発時の超音波像を観察できたので報告する.
【対象と方法】
2008年4月から2016年12月まで,当科で経験したPSC5例について,体外式腹部超音波所見(US)を中心に後方視的に検討した.USでの検討項目は①肝外and/or肝内胆管の壁肥厚,②肝外and/or肝内胆管拡張,③肝門部リンパ節腫脹.
【結果】
PSC5例の男女比は,4:1,診断時年齢中央値は13歳で平均観察期間は4年7か月.潰瘍性大腸炎合併は3例,分類不能腸炎合併は2例.症状は血便2例,腹痛3例,無症状1例.AST,ALT,総ビリルビン,γGTP,LAP,IgGの平均値はそれぞれ62U/L,80U/L,0.36mg/dL,277U/L,194U/L,2,436mg/dL.自己免疫性肝炎やIgG4関連疾患の合併はなし.US所見は①肝外and/or肝内胆管の壁肥厚100%(5/5),②肝外and/or肝内胆管拡張40%(2/5),③肝門部リンパ節腫脹100%(5/5).MRCPでは全例でMajoieの分類(AJR:157,1991)に示される所見は得られなかったが,ERCPでは軽微な胆管の狭小化や拡張を認めた.全例肝生検を行い肝内小型胆管周囲のonion-skin状の線維化が観察され,確定診断された.PSC合併のない他のIBD症例(122例)では,胆管壁肥厚と肝門部リンパ節腫脹の両方を呈した症例はなかった.
【考察】
成人例PSCと異なり,小児期PSCではERCPでの胆管病変は軽微であるが,このことは一般に周知されていない.早期に診断されるためか我々の経験した小児PSC症例でもERCPでの病変は軽微で,MRCPでは全く異常を指摘されなかった.近年PSCにおけるMRCPの位置づけが高くなり,ERCPは必ずしも必要でないという意見も多いが,小児期PSCにおいては,MRCPはスクリーングとして機能しない可能性がある.PSCの確定診断には,肝生検やERCPなど侵襲的な手技を要するため精査対象は慎重に決定するべきである.一方で小児ではこれらの検査が敬遠されることが多い.PSCの内視鏡下超音波(EUS)の報告は成人例で数例あり胆管の壁肥厚が高率に観察されているが,体外式超音波の報告は少ない.少児例ではあるが自験例では,全例が初回の超音波検査で肝門部リンパ節腫脹を伴う特徴的な胆管病変を指摘し,PSCを疑われ速やかに肝生検とERCPを施行することが可能であった.USは肝疾患を有する患者には第一に行われる画像検査であるがIBDでかつ,肝胆道系酵素上昇を有する患者に対してはPSCの可能性を考え,詳細な肝門部や胆道系の観察を行うべきである.
【結語】
自験5例の小児期PSCにおいては,MRCPでは異常が観察されなかった.しかし,初回の超音波で胆管の壁肥厚と肝門部リンパ節腫脹が観察され,かつ,これらの所見は他のPSC非合併IBD症例では観察されなかった.よって小児期PSCのスクリーニングにUSは非常に有用である.
【謝辞】
ERCPを施行していただいた大阪医科大学第二内科の増田先生に深謝いたします.