Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道2

(S528)

胆嚢底部にみられる限局型のアデノミオマトーシスの検討

Study of fundal-type GB adenomyomatosis

池田 和典

Kazunori IKEDA

国立病院機構千葉医療センター検査科

Clinical Laboratory, Natinal Hospital Organization Chiba Medical Center

キーワード :

【目的】
胆嚢腺筋腫症(胆嚢アデノミオマトーシス以下ADM)はRokitansky-Aschoff sinus(RAS)の増殖とそれに伴う胆嚢壁の肥厚を基本とする病態であり,その分類は画像診断的には胆嚢底部に円盤状あるいは半球状の隆起性腫瘤としてみられるfundal-type,頚部や体部に分節状,全周性に壁肥厚がみられるsegmental-typeと全体的に壁肥厚がみられるdiffuse-typeと3型に分類されているが,その形態はさまざまである.この中で底部に限局するADMは腫瘤として観察される場合があり,胆嚢癌との鑑別が問題となることもある.今回,胆嚢底部にのみ限局して観察されたfundal-typeのADMについて検討した.
【対象と方法】
対象は2015.5から2016.4までの一年間に腹部超音波検査を施行した症例の中で底部に限局した胆嚢ADMと診断された28例である.使用した超音波診断装置は東芝Aplio500であり,診断までの経過と診断方法など超音波所見を中心に臨床所見を検討した.
【結果】
底部に限局したADM29例中男性は12例,女性は16例であった.年齢は34歳から91歳であり男性の平均は68歳,女性は64歳であった.診断のきっかけは健診が5例,肝障害精査が6例,胆嚢を含めた消化器精査が10例,他疾患精査が7例であった.最初に指摘した画像診断は超音波検査が21例,CTが4例,MRCPが3例であった.超音波検査で見逃されたものは9例であり,その後のCTとMRCPで診断されたものが5例,USで診断されたものが4例であった.胆嚢内病変として,胆嚢ポリープ合併が4例,胆嚢結石合併が10例にみられた.他の画像診断で診断された7例のなかで超音波検査で描出困難であったものは,ADMの病変が小病変であったものが1例,高周波のプローブを併用し観察されたものが3例にみられた.超音波検査で診断前に検出できなかった9例のなかで,十分な観察をしていないと考えられたものが4例,体表に近かったり消化管ガスの影響で描出が困難であったものが5例であった.9例中胆石合併は2例に見られたが,胆石が原因で描出できなかった例はなかった.
【考察】
fundal-typeのADMは胆嚢壁の肥厚が限局的に観察され,腫瘍との鑑別が問題となる場合があり,その存在を認識しておく必要がある.胆嚢底部は体表に近い位置に存在する場合,超音波検査では肋間走査,右季肋下部走査で多重反射のアーチファクトなどの影響や胆嚢周囲の消化管ガスの影響で描出困難なこともあり,一見観察しやすい胆嚢の超音波検査も胆嚢頸部の描出と並んで病変の検出に注意しなければならない部位である.今回の検討でも体表近くの観察に有用な高周波プローブではじめて観察できた症例もみられる.超音波検査の技量がある経験のある術者でも見逃していることが散見され,あらためて胆嚢底部の観察に注意を払う必要があると考えられた