Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道2

(S527)

体外式超音波による肝外胆管結石の描出率の検討

Diagnostic ability of ultrasonography for the extrahepatic bile duct stones

岩崎 隆一, 畠 二郎, 竹之内 陽子, 谷口 真由美, 岩井 美喜, 麓 由起子, 妹尾 顕祐, 山根 愛美, 今村 祐志, 眞部 紀明

Ryuichi IWASAKI, Jiro HATA, Yoko TAKENOUCHI, Mayumi TANIGUCHI, Miki IWAI, Yukiko HUMOTO, Kensuke SENOH, Ami YAMANE, Hiroshi IMAMURA, Noriaki MANABE

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
肝外胆管結石の体外式超音波(以下US)による診断能はこれまでさほど良好でないとされてきたが,機器の著しい改良に伴い改善傾向にあることが推測される.しかしながらそれに関する報告は少なく,我々の過去の検討ではUSによる肝外胆管結石の描出能(検討期間:2006~2010年)は65.7%であった(第84回本学会学術集会).
【目的】
さらに機器性能が進歩した現時点でのUSによる肝外胆管結石の描出能とそれに影響する因子に関して検討する.
【対象】
2011年1月から2016年10月までに諸検査に先行してUSを施行し,その後1ヶ月以内に内視鏡的逆行性胆管膵管造影(以下ERCP)を施行された227例(男性121例,女性106例,平均年齢75.3歳).
【方法】
使用機種は東芝社製Aplioシリーズ,プローブは3.75MHz,6.0MHzコンベックスプローブ,7.0MHzリニアプローブである.検討項目は1.US,CT,MRCP,ERCPの肝外胆管結石の描出率,2.検査年度別描出率,3.肝外胆管結石の描出率に影響を及ぼす因子について(BMI,腹膜―腹部大動脈前面間距離(以下腹膜―Ao間距離),肝外胆管径,肝外胆管結石径),4.US描出不能例の妨害因子について(消化管ガス,減衰,胆嚢充満結石,その他),5. US経験年数が10年以上を上級者(3名),3年以上9年未満を中級者(7名),3年未満を初級者(2名)とした場合の検者別描出率とした.
【結果】
1.肝外胆管結石の描出率はUS 73.1%(227例中166例)であり,前回の検討による描出率に比較して7.8%上昇していた.他のmodalityによる描出率はCT 75.4%(130例中98例),MRCP 88.4%(43例中38例),ERCP 100%(227例中227例)であった.USで指摘し,CTで指摘できなかった症例は13.3%(166例中22例)存在した.2.USの各年毎の描出率は2011年84.4%(32例中27例),2012年72.1%(43例中31例),2013年69.0%(29例中20例),2014年75.0%(36例中27例),2015年68.5%(54例中37例),2016年72.7%(33例中24例)であり,明らかな差は認めなかった.3.USによる結石描出群と描出不能群で有意差を認めた因子は肝外胆管径と肝外胆管結石径で,BMI,腹膜―Ao間距離は両群間に有意差を認めなかった.4.US描出不能例の妨害因子は消化管ガス63.9%,減衰27.9%,胆嚢充満結石1.6%,その他6.6%であった.5.検者別描出率は上級者81.8%,中級者75.2%,初級者55.1%であった.
【考察】
USで指摘し,CTでは指摘できなかったX線陰性石症例は既報では16%,今回の検討でも13%存在し,これらに関してはUSが必須であると思われる.既報ではBMI,腹膜―Ao間距離,肝外胆管径,肝外胆管結石径のすべての因子で描出例と描出不能例間に有意差を認めたが,今回の検討ではBMIと腹膜―Ao間距離は描出不能例間に有意差を認めなかった.これは被検者の体格や内臓脂肪が描出率に与える影響が少ないことを意味し,深部結石の描出技術の向上,機器の進歩に伴うペネトレーションやコントラスト分解能の改善による結果と考えられた.妨害因子としては消化管ガスがもっとも多く,既報と同様であった.排除困難なガスが大半であったが,どのようにその影響を少なくするかは今後の重要な検討課題である.経験年数別に描出率に差がみられた技術上の原因として,初級者群において拡張していない肝外胆管の追跡不足による見落としが22%存在しており,胆管を十二指腸開口部まで追跡するという意識をもつことにより描出率を向上させることが可能と考えられた.
【結語】
USによる肝外胆管結石の描出率はCTとほぼ同等であったことから,本疾患が疑われる症例におけるfirst lineの検査法として位置づけられるべきと考えられた.