Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道1

(S525)

急性胆嚢炎におけるUSとCTの画像所見の比較

Comparison of image findings of ultrasound and CT in acute cholecystitis

市川 宏紀, 橋ノ口 信一, 乙部 克彦, 石川 照芳, 今吉 由美, 川地 俊明, 熊田 卓, 金森 明, 豊田 秀徳, 多田 俊史

Hironori ICHIKAWA, Shinichi HASHINOKUCHI, Katsuhiko OTOBE, Teruyoshi ISHIKAWA, Yumi IMAYOSHI, Toshiaki KAWACHI, Takashi KUMADA, Akira KANAMORI, Hidenori TOYODA, Toshifumi TADA

1大垣市民病院医療技術部診療検査科, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン(TG 13(Updated Tokyo Guidelines)記載では超音波検査(以下US)は急性胆炎が疑われるすべての症例に超音波検査を行うべきである(推奨度1,レベルA)とされている.一方,時間外救急診療では多くの施設でCT検査に依存している.しかしUSによる空間分解能や簡便性など注目されるべきで点は多い.今回我々は急性胆嚢炎におけるUSの診断成績を評価するため,CTの画像所見と比較検討したので報告する.
【方法】
対象は2015年1月から2016年10月の期間に外科手術が施行され病理組織学的に急性胆嚢炎と診断された140例中,USとCTおよび手術を同日に施行されており,気腫性胆嚢炎や黄色肉芽腫性胆嚢炎を除いた54例.USとCTの共通所見として,胆嚢腫大,壁肥厚,結石,胆泥の描出率を比較した.CTにおいては胆嚢内腔CT値の上昇も胆泥所見として含めた.また,急胆のう炎を示唆する所見としてUSでは胆嚢壁の不整な多層構造を呈する低エコー帯(striations),CTでは周囲脂肪織濃度上昇を後方視的に検討した.また,壊死性胆嚢炎と急性胆嚢炎について所見の描出率の比較を行った.壊死性胆嚢炎は病理組織で壊死を認めたものとした.
【結果】
検定方法は2群の比率の差の検定で行った.各機器での描出率は腫大(US:CT=85%:82%)P=0.79,壁肥厚(US:CT=93%:93%)P=1,結石(US:CT=83%:59%)P=0.01,胆泥(US:CT=80%:13%)P<0.01となり,結石と胆泥の描出率に差を認めた.副次的所見はUSでのstriationsが82%で認め,CTでの周囲脂肪織濃度上昇は90%で認めた.各々の副次的所見を合算すると全症例の94%で所見の検出が可能であった.共通4項目どれか1項目でも描出できた症例はUS,CTともに100%であり,胆嚢腫大+壁肥厚の2項目を描出した症例はUS,CTともに78%であったが,胆嚢腫大+壁肥厚+(胆石,胆泥のいずれか)の3項目を描出した症例はUSが69%,CTが50%であった(P=0.05).4項目すべて検出できた症例はUSが56%,CTが9%であった(P<0.01).また,壊死性胆嚢炎と急性胆嚢炎について所見の描出率で差が見られたのはUS所見のstriations(P=0.03)だけであった.
【考察】
本検討ではUS,CTともに胆嚢腫大や壁肥厚の描出率は高かった.USは壁構造の検出および結石や胆泥などの内部構造物の描出に優れており,CTは壁外の間接所見の描出率が高かった.USは所見検出能に優れる一方,CTは壁外構造の確認や炎症の範囲などが評価可能になるため手術には必要な画像所見が検出できる可能性がある.またUSとCTの副次的所見を合わせると診断精度が向上する可能性が示唆される.Limitationとして初期の胆嚢炎で画像所見が検出されなかった可能性がある.また,USは被検者の体型や術者によって画像所見の描出が依存され,CTでは再構成スライス厚や再構成関数,アーチファクトにより画像所見の描出能が左右される可能性がある.
【結語】
急性胆嚢炎の診断目的としての所見描出能はCTよりUSの所見描出率が高かった.