Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓

(S524)

腹部超音波検査における膵尾部充実性腫瘍の描出困難因子の検討

Investigation of the unobservable factor of pancreatic tail tumor by transabdominal ultrasonography

酒井 大輔, 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 河合 学, 須原 寛樹, 竹山 友章, 中村 正直, 後藤 秀実

Daisuke SAKAI, Yoshiki HIROOKA, Hiroki KAWASHIMA, Eizaburo OHNO, Takuya ISHIKAWA, Manabu KAWAI, Hiroki SUHARA, Tomoaki TAKEYAMA, Masanao NAKAMURA, Hidemi GOTO

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【背景】
経腹的腹部超音波検査(US)は,低侵襲,低コストでリアルタイム観察が可能であることから,本邦では膵臓スクリーニングにおける第一選択の画像検査である.一方,既報(Sumi et al. European Journal of Radiology 83(2014)1324-1331)のごとく,特に膵尾部において描出率が低く,膵スクリーニング画像検査として課題も多い.
【目的】
USにおける膵尾部充実性腫瘍の描出困難因子を解明すること.
【方法】
2007年4月から2016年11月までに当院で手術を施行された膵充実性腫瘍214例(膵癌148例,神経内分泌腫瘍(以下pNEN)46例,充実性偽乳頭状腫瘍(以下SPN)20例)のうち,膵尾部(膵癌取扱い規約第7版に準ずる)の充実性腫瘍42例(膵癌23例,pNEN16例,SPN3例)を対象とした.造影CT,MRIにより腫瘍の存在が既知であったものを,術前US描出可能23例(描出可能群)と描出不能19例(描出不可能群)に分類した.両群における1)背景因子(性別,年齢,身長,体重,BMI,腫瘍径),2)膵尾部腫瘍の描出に影響しうると推測される血液生化学検査項目(TP,Alb,ChE,TG,T-CHO,LDL-C,HDL-C,HbA1c)を比較検討し,3)多変量解析(二項ロジスティック回帰分析)を行った.4)また3)の結果から抽出された因子につき個々の症例毎に検討を行った.
【成績】
1)描出可能群23例(膵癌11例,pNEN10例,SPN2例)では男性10例(43.5%),年齢中央値60(27-79)歳,身長159.0(145-174.8)cm,体重50.6(36.3-72.7)kg,BMI19.4(12.8-27.7),腫瘍径28(7-90)mmであった.描出不能19例(膵癌12例,pNEN6例,SPN1例)では男性例11例(57.9%),年齢中央値65(18-77)歳,身長162.5(143.6-180.3)cm,体重55.6(36.0-75.6)kg,BMI21.4(13.8-28.3),腫瘍径18(10-35)mmで腫瘍経のみ有意差(P<0.001)を認めた.2)血液生化学検査ではいずれの項目も両群で有意差を認めなかった.3)単変量解析でP値が0.2以下の項目(体重,BMI,腫瘍径)を抽出し多変量解析を行うと,腫瘍径(P=0.0065)のみ有意差を認めた.4)描出可能群のうちで腫瘍径が20mm以下であった症例は3例で膵癌1例(20mm)pNEN2例(7mm,20mm)であった.3症例ともに検討した項目において特記すべき点はなかったが,pNENの2例は腫瘍が大動脈のすぐ左縁に存在し描出可能であったと考えられた.膵癌の1例は最尾側に存在していたが脾臓との間に腸管が介さなかったため,経脾臓的に描出が可能であった.また描出不可能群で腫瘍径が20mmを超えていた症例は5例で膵癌3例(22mm,25mm,35mm),pNEN1例(30mm),SPN1例(28mm)であった.pNENの1例は多発する巨大な肝嚢胞があり後方エコーの増強により描出が困難であった.またSPNの1例は精神疾患から意思疎通がやや困難であったことが要因として考えられた.残りの膵癌3例は最尾側に腫瘍が存在し経脾臓的にも腸管が重なったため描出困難であったと考えられた.
【結論】
USにおいて膵尾部充実性腫瘍が描出困難となる因子として統計学的には腫瘍径が抽出されたが,個々の症例を検討すると,20mmを超える腫瘍であっても腫瘍の局在,腸管の介在により描出困難な場合もあり注意を要すると考えられた.