澁谷 友美, 後藤 隆, 飯島 克則

Tomomi SHIBUYA, Takashi GOTO, Katsunori IIJIMA

秋田大学医学部附属病院消化器内科学講座

Division of Gastroenterology, Akita University School of Medicine

キーワード :

膵臓におけるVirtual Touch Quantificationを用いた評価
Analysis of Pancreas with Virtual Touch Quantification
【目的】
組織の固さを知る方法として，収束超音波パルスの音響放射圧を用いて生体組織内に微妙な変位を生じさせ，その程度から組織の固さの情報を得るAcoustic Radiation Force Impulse（ARFI）によるVirtual Touch Quantification（VTQ）が実用化されている．しかし膵臓における使用報告は未だ少ない．今回我々は膵臓のVTQ測定方法とchronic pancreatitisのVTQ測定値を検討し若干の知見が得られたので報告する．
【方法】
当施設において超音波検査が施行された膵臓疾患を指摘されていない54例（男性22例，女性32例，58.5±16.6歳（24歳～80歳））と，臨床的に診断された慢性膵炎7例（男性4例，女性3例，61.0±11.4歳（39歳～76歳））を対象とした．膵体部の剪断波速度を肝臓を介して連続6回測定し，測定値の平均値を用いた．測定ルートの検討のため，肝臓と膵臓を同時に測定した49例のVTQ値の相関を検討した．次に膵疾患を指摘されていない群と慢性膵炎群との膵臓VTQ値を比較検討した．使用機器はSIEMENS社製ACUSON S2000と4C1コンベックスプローブ（周波数1～4MHz）を用いた．
【結果】
膵臓と肝臓のVTQ値の相関についてはp=0.56と明らかな相関は得られなかった．臨床的に診断されたchronic pancreatitisのVTQ値はVs=1.69±0.43（m/s）であり，膵疾患のない群のVTQ値（Vs=1.38±0.31（m/s））と比較して有意に高値を示した（p＜0.05）.
【考察】
Virtual Touch QuantificationにおけるVTQ測定は膵臓測定においても有用と考えられる．chronic pancreasにおいてVTQ値が有意に高値を示し，VTQ測定値は膵臓の線維化を反映していることが示唆された．