Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓

(S523)

当院にて施行している膵精密超音波検査の検査精度の検証-膵胞検出率に着目して

Validation of the quality of special pancreatic ultrasonography using the detection rate of pancreatic cysts as an indicator

大川 和良, 仲尾 美穂, 福田 順子, 中尾 恵子, 蘆田 玲子, 井岡 達也, 榊原 充, 田中 幸子, 片山 和宏

Kazuyoshi OHKAWA, Miho NAKAO, Junko FUKUDA, Keiko NAKAO, Reiko ASHIDA, Tatsuya IOKA, Mitsuru SAKAKIBARA, Sachiko TANAKA, Kazuhiro KATAYAMA

1大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)肝胆膵内科, 2大阪府立病院機構大阪国際がんセンター検診部消化器検診科, 3大阪がん循環器病予防センター所長

1Department of Hepatobiliary and Pancreatic Oncology, Osaka International Cancer Institute, 2Department of Gastrointestinal Cancer Screening and Surveillance, Osaka International Cancer Institute, 3Director, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention

キーワード :

【背景】
当院においては,通常上腹部スクリーニング超音波検査(以下,上腹部スクリーニングエコー)とは別枠で,膵(+胆道)疾患に特化した膵精密超音波検査(以下,膵精密エコー)を設定している.膵精密エコーでは膵の広範囲にわたって良好な描出を得るために,専用ベッドを用いた半坐位+体位変換(右,左側臥位),胃充満法などの工夫をして,十分な検査時間(20分以上)を取って検査を施行している.この方法を用いて,当院では1998年より膵胞あるいは主膵管拡張を有する症例の前向き登録を行い,膵癌早期発見のための定期検査を行ってきた.実際に1998年からの4年間に登録した1058例中12例において経過観察中に膵癌の発症を認めたが,そのうち6例はStage 0もしくはIの症例であり,膵精密エコーが膵癌の早期発見に有用であることを報告してきた(Tanaka S et al. Pancreas 2004; 28: 268,Radiology 2010; 254: 965).しかしながら,膵精密エコーの有用性を更に検証するためには,その検査精度を上腹部スクリーニングエコーと比較して客観的に検討する必要がある.
【目的】
本研究では膵胞症例を対象として,膵精密エコーと上腹部スクリーニングエコーとの間の胞検出感度の差異について検討し,膵精密エコーの検査精度の検証を試みた.
【対象】
2011年4月から2013年3月までに当院にて膵精密エコーを施行した3704例中,6ヶ月以内に上腹部スクリーニングエコーを受検し,かつ観察期間中に腹部MRI/MRCPを施行した186例を検討に用いた.年齢は69±10歳,男性71例,女性115例,上腹部スクリーニングエコーとの平均検査間隔は1.0ヶ月,MRIとの平均検査間隔は4.7ヶ月であった.MRIで検出された5mm以上の膵胞(合計447個)を対象として,膵精密エコーと上腹部スクリーニングエコーのそれぞれの検出感度を部位別に検討した.統計学的解析にはMcNemar testを用いた.
【結果】
MRIで指摘された115例,447個の膵胞のうち,膵精密エコーは412個(92%),上腹部スクリーニングエコーは314個(70%)を検出した(p<0.001).部位別にみた検出率の検討では,鉤部89%vs. 74%(p=0.012),頭部98%vs. 70%(p<0.001),体部97%vs. 81%(p<0.001),体尾部89%vs. 67%(p<0.001),尾部67%vs. 27%(p<0.001)であり,いずれの部位においても膵精密エコーにおいて膵胞検出感度が高かった.
【結語】
当院の上腹部スクリーニングエコーにおける膵胞検出率は,他施設からの既報と比較して劣っていないと考えるが,膵精密エコーは膵の全ての部位において,胞検出率が上腹部スクリーニングエコーよりも高かった.以上のことより膵精密エコーは膵の占拠性病変(特に小膵癌)の早期発見のスクリーニングに有用であることが示唆された.