Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓その他

(S522)

肝実質における周波数依存減衰係数測定の試み

Assessment of measurement of the liver frequency dependent attenuation coefficient

小山 展子, 畠 二郎, 河合 良介, 眞部 紀明, 今村 祐志

Nobuko KOYAMA, Jiro HATA, Ryousuke KAWAI, Noriaki MANABE, Hiroshi IMAMURA

1川﨑医科大学肝胆膵内科学, 2川崎医科大学検査診断学

1Hepatology and Pancreatology, Kawasaki Medical School, 2Clinical Pathology and Laboratory, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
周波数依存減衰係数(以下,減衰係数)は組織特性を評価する手法の一つであり,その概念は古くから存在していたが,近年になり一般の機器で測定が可能となった.肝臓における減衰はこれまで目視により行われていたが,客観的指標がないことから個体間での比較が困難であった.
【目的】
肝実質の減衰係数を測定し,それを左右する因子を検討する.
【対象・方法】
2016年9月から同年12月までの間に東芝社製アプリオi900,475BXプローブを用いて肝実質の減衰係数を測定した97例を対象とした.内訳は超音波で形態学的変化を認めた慢性肝疾患11例(肝硬変6例,慢性肝障害5例), bright liver29例,正常肝57例.年齢は61±20歳,男性47例,女性50例.右肋間走査から肝右葉を描出し,多重反射や肺,消化管のガスなどによるサイドローブの影響を受けていない部位で肝表面から5cmの深度に33cmのROIを設定し,10回以上の測定を行った後,信頼係数が高い5回の測定値の平均を算出した.
1.背景肝で分けた3群(慢性肝疾患群(肝硬変・慢性肝障害),bright liver群,正常肝群)
2.bright liver群において,肝腎コントラストの強さで分けた3群(軽度群,中等度群,高度群)
3.正常肝群において,年齢の中央値69歳をカットオフ値として分けた2群(69歳未満群,69歳以上群)
以上の群間での減衰係数を比較検討した.
統計学的検討にはマン・ホイットニ検定を用いた.
【結果】
慢性肝疾患群の減衰係数は0.66±0.09dB/cm/MHz, bright liver群は0.75±0.11 dB/cm/MHz,正常肝群は0.60±0.08dB/cm/MHzでありbright liver群と正常肝群においてbright liver群が有意に高値を示した(p<0.01).慢性肝疾患群と正常肝群において統計学的有意差は得られなかったが慢性肝疾患群が高値を示す傾向にあった(p=0.053).
bright liver群において,肝腎コントラスト軽度群の減衰係数は0.71±0.10,中等度群は0.74±0.10,高度群は0.84±0.10であり,軽度群と高度群において高度群が有意に高値を示した(p<0.05).
正常肝群において69歳未満群の減衰係数は0.57±0.08,69歳以上群は0.63±0.07であり69歳以上群が69歳未満群と比較し,減衰係数が有意に高値を示した(p=0.01).
【考察】
Bright liverにおける減衰は目視でも容易に想像可能であるが,今回の検討でもそれを客観的な数値として確認することができた.一方慢性肝疾患においても減衰係数は高値を呈しており,小葉構造の改変に伴い後方散乱以外の散乱が増加していることが示唆された.また正常肝と思われる症例においては加齢に伴い減衰係数が高値となる傾向がみられた.以上のいずれに関しても症例数が少なく,今後の検討を必要とすると思われた.
【結語】
肝臓の減衰係数に影響する因子として,bright liver,慢性肝疾患,加齢が挙げられた.目視できない散乱を数値化し,組織構築の変化を推測する手法として今後の有用性が期待される.