Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓その他

(S521)

肝嚢胞および肝腫瘤における外側音響陰影の発生機序について-simulation analysis

Lateral Shadow of hepatic cyst and tumor : simulation analysis of diffusion of ultrasound beam

宇野 篤, 石田 秀明

Atsushi UNO, Hideaki ISHIDA

1市立大森病院内科, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Internal Medicine, Omori Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで超音波ビームの屈折により生じる各種アーチファクトをcomputer simulationを用いて解析し,その結果を報告してきた.手法としては主として幅を持たず減衰しない仮想的なビーム(線分)の経路上に介在する対象物におけるビームの屈折ないし反射を計算し,対象物およびその後方における画像の歪みを検討するものであった.この手法は歪み自体を正確に描画可能である利点があるが,肝嚢胞や肝腫瘤における外側音響陰影の発生機序を論ずる際は後方に仮想的な膜様の構造物を配置するなどの工夫が必要となり,直感的な把握が困難な欠点があった.そこで今回は実際に則してビームに幅をもたせた条件下で外側音響陰影の出現機序を解析したので報告する.
【基礎的検討(方法)】
1)観察対象物としては肝嚢胞(音速:1450m/s)および肝腫瘤(1600 m/s)とした.なお肝の音速は1540m/sと仮定した.2)肝~肝嚢胞(または肝腫瘤)~後方の超音波伝搬経路を計算しビームの軌跡を表示した.なおこの時点では仮想的にビーム自体に幅は存在しない作図上の線分とする.これをn番目の線分とする.3)前項で計算したビームに極近傍に隣接したn+1番目のビームの軌跡を同様に計算する.4)それぞれ幅を持たないn番目とn+1番目のビームとの間隙は近似的に幅をもったビームと想定でき,そのビームの軌跡を表示し像を解釈・検討した.
【基礎的検討(結果)】
1)肝嚢胞を通過するビームは外側部から内側方向へ屈折する傾向にあった.それに対して音速の速い肝腫瘤においては逆にビームは内側部から外側方向に屈折する傾向にあった.2)対象物を通過するビームの幅は対象物の最外側近傍を通過する場合を除き,ビームの放射点におけるビーム幅と大きく変化することはなかった.3)対象物の最外側近傍を通過する場合,あたかも臨界に達したようにビームの幅が極端に大きく広がって描出された.4)前項におけるビーム幅は肝嚢胞においては内側方向に,音速の速い肝腫瘤においては外側方向に大きく広がる傾向にあった.
【まとめ・考察】
肝嚢胞および音速の速い肝腫瘤のいずれも最外側近傍においてビームは大きく広がる現象が確認された.これは同部で超音波ビームが極端な拡散をきたしていることを意味し,ここから後方の情報は装置が認識不能な状態となっていることが予想される.外側音響陰影はこれらの機序で発生するartifactの一例であるものと理解される.