Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓その他

(S519)

急性肝炎における肝臓の硬さおよび肝実質灌流動態の検討

Evaluation of the liver stiffness and liver blood flow in patients with acute liver disease

松清 靖, 荻野 悠, 和久井 紀貴, 篠原 美絵, 池原 孝, 永井 英成, 渡邉 学, 住野 泰清, 工藤 岳秀, 丸山 憲一

Yasushi MATSUKIYO, Yu OGINO, Noritaka WAKUI, Mie SHINOHARA, Takashi IKEHARA, Hidenari NAGAI, Manabu WATANABE, Yasukiyo SUMINO, Takahide KUDO, Kenichi MARUYAMA

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center, 2Dept of Clinical Functional, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで急性肝炎における肝実質の硬度および血液灌流動態について検討してきた.その結果,急性期に実質灌流は動脈化を来たし,また諸家の報告と同様,肝臓の硬度は増すことを報告した.両者ともに病態の回復とともに改善するという可逆性をもつ.所見が改善しない場合には予後不良の場合が多いが,両者は必ずしも同時に変化するわけではなく,乖離した動きを呈する症例もある.とくにこの乖離が明らかな症例においては,特別な病態を呈することが多い.
【目的】
急性肝炎における肝実質灌流動態および硬さと病態の関連を明らかにする.
【対象および方法】
対象は急性肝炎26例(HAV 3例,HBV 22例,HEV 1例).このうち病理組織診断は7例(HA 1例,HB 5例,HE 1例)で得られた.
肝実質灌流動態:装置は東芝AplioXG(探触子は3.75MHzコンベックス型)を使用.早朝空腹時に推奨量(0.015ml/kg)の超音波造影剤Sonazoidを静注し,30秒間動画記録.得られた画像からArrival-time Parametric Image: AtPIを作成し,肝実質灌流の動脈化が起こっているか否かを検討した.さらに視覚的に病態を把握しやすいように,AtPIの色調を門脈到達時間で二分し(前を赤色,後を青色),Perfusion Parametric Image: Perfusion-PIと呼称した.Perfusion-PIは赤色部分が動脈からの灌流のパラメータになると考え,画像解析ソフトで赤色ピクセルの比率を算出し(Arterialization ratio: AR),比較検討した.
硬さ:Siemens社ACUSON S2000を用いVirtual Touch Quantification(VTQ)でVs値を求めた.測定は肋間走査でS5領域を対象に6回施行し,中央値を算出した.
これらの手法を用いて急性期と回復期を検討した.急性期は入院時または経過中でALTが最も高い時点,回復期はALTが正常の2倍以内またはT-BILが3mg/dl以下となった時点とした.
【結果】
①ARとVTQ:急性期と回復期
AR:p=0.00245と有意に回復期で軽快.
VTQ:p=0.00336と有意に回復期で軽快.
以上からAR,VTQともに急性期と回復期を分別する手法として有用であると示された.そのため,ARとVTQにどのような関係があるかをさらに比較検討した.
②ARとVTQの比較
すべての時点:相関係数r=0.508と比較的高い正の相関を示した.
急性期:相関係数r=0.550と比較的高い正の相関を示した.
回復期:相関係数r=0.471と比較的高い正の相関を示した.
以上からARとVTQの間には比較的高い相関を示したが,ARが正常化してもVTQが正常より高値である症例があり,我々が正常範囲と考えるAR≦20%の症例で比較した.
AR≦20%:相関係数r=0.377と低い正の相関を示した.
【考察】
肝血流動態も硬さも回復期に軽快しており,病態の改善を示すとして矛盾しない.一方,肝血流動態が完全に正常化しても硬さは正常より高値な症例が存在する.これは,肝血流動態はサイトカインによる炎症状態を反映しているため,炎症が改善すれば正常化するが,硬さに影響するような組織の変化は徐々に改善するためにこのような解離が生じた推測する.つまり,硬くても肝血流が正常化していれば回復過程にあると考える.
【結語】
急性肝障害における肝実質灌流動態と硬さを観察することは病態の変化を見るだけではなく,回復過程にあるかどうかを判断する有用な手法である.