Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
脂肪肝1

(S516)

脂肪肝実質のB-mode像に現れる簾状エコーの視認性と順応性に関する考察

Consideration on visual recognition and adaptation of bamboo blind sign observed on B-mode of fatty liver

神山 直久, 石田 秀明, 金山 侑子, 長沼 裕子

Naohisa KAMIYAMA, Hideaki ISHIDA, Yuko KANAYAMA, Hiroko NAGANUMA

1GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発部, 2秋田赤十字病院消化器科, 3市立横手病院消化器科

1Ultrasound Division, GE Healthcare, 2Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
高度の脂肪肝や脂肪肝炎(NASH)では,肝実質内にRaindrops sign,簾状エコー(BBS)とよばれる細い簾状陰影が出現することが知られている.この発生機序としては,脂肪巣-周囲肝実質,肝実質-肝内脈管壁などの構造間で生じる音波の屈折などが挙げられるが,未解明な点も多い[1].さらにBBSの出現パタンに関しても検討すべき点が残されている.例えば,動画像では多数の陰影が視認できるが,静止画として観ると陰影が視認し難くなる,ということを経験する.今回,この視認性の差異について検討した.
【方法】
対象は,BBSが観測された脂肪肝症例5例.超音波装置(LOGIQ E9),腹部用凸型プローブ(C1-6)にて右肋間から肝臓を断面に垂直な方向に3次元的に走査した動画像を取得する.この動画像とそこから切り出した静止画,およびその画像サイズを縮小・拡大して,BBSの視認性を比較する.また画像にLow-pass filter(LPF),High-pass filter(HPF)処理を施して同様に視認性を比較する.
【結果と考察】
まず,静止画では,BBSの視認性が低下することが改めて確認された.またBBSはサムネイルほどに縮小した方が視認性は向上した.
このヒントとなる文献の一つはHybrid image[2]である.これは,見る距離によって異なる2通りに見える画像であり,その作成原理は,空間周波数を高周波帯域のみにした画像と低周波帯域のみの画像を重畳させている.
肝実質部の画像の一部のみ切り出して拡大視した状態を模擬し,これにLPF, HPF処理を施すと,BBSとspeckle patternが分離された(図).すなわち,speckle patternは空間周波数の高周波成分を多く含み,BBSは低周波成分を多く含むため,画像を縮小・拡大することは観察距離を変化させることに相当し,hybrid imageと同様の機序によりBBSの視認性が変化するのだと考えられる.
また文献[3]では,一定時間同じ空間周波数を観察していると,この空間周波数に対するコントラスト感度が低下する(周波数選択的順応)現象が実験的に示されており,これは,静止画を凝視していると視覚的順応が生じて簾状の視認性が低下する原因の仮説の1つとなり得る.
【結語】
本稿で提示された現象は,視覚系の空間周波数特性で説明可能である.
【文献】
[1]神山他.超音波医学,43(5):655-62(2016).
[2]Oliva et al. ACM Trans. on Graphics. 25(3):52732(2006).
[3]Blackmore et al. J Physiol. 203: 237-60(1969).