松本 直樹, 小川 眞広, 熊川 まり子, 渡邊 幸信, 平山 みどり, 三浦 隆生, 益岡 晋也, 中河原 浩史, 森山 光彦, 片山 和弥

Naoki MATSUMOTO, Masahiro OGAWA, Mariko KUMAGAWA, Yukinobu WATANABE, Midori HIRAYAMA, Takao MIURA, Shinya MASUOKA, Hiroshi NAKAGAWARA, Mitsuhiko MORIYAMA, Kazuya KATAYAMA

¹日本大学医学部消化器肝臓内科, ²医療法人社団せいおう会鶯谷健診センター放射線チーム

¹Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine, ²Department of Radiology, Uguisudani Medical Center

キーワード :

【目的】
脂肪肝は通常，肝全体に均一に生じることが超音波画像上確認される．一方で供血血管の関係から，胆嚢周囲やS3，S4などに限局性低脂肪域が見られることも良く見られる．それとは別に，右葉のみ，左葉のみ，また区域性の低脂肪域など，肝区域に沿って脂肪化の程度が違うこともしばしば経験されるが，それらの詳細な報告は少ない．今回，区域性脂肪肝の症例について検討したので報告する．
【方法】
2015年12月～2016年12月に当施設でドック受診した約4160名のうち，区域性に脂肪肝または低脂肪域が見られた22例を対象とした．使用装置はAplio300（東芝），LOGIQ7（GE）など．保存された静止画から解析した．内訳は右葉優位に脂肪沈着が見られたのが10例，左葉優位が4例，低脂肪域はS6 2例，S6/7 1例，S7/8 1例，S7 1例，S8 1例，S5 1例，S4 1例．年齢は50..5（39-66）歳，性別は男性19例，女性3例．飲酒歴はあり18例，無し4例．検討項目は1．体格，2．基礎疾患，3．血液所見，4．体重の増減，5．超音波所見の変化．
【成績】
1.BMIは25.3（20.1-35.4），腹囲は90.3（81-109）cm，体脂肪率は25.8（16.3-33.3％）．2．基礎疾患の合併は高血圧症6例（27.3％），糖尿病0例，脂質異常症12例（54.5％），高尿酸血症9例（40.9％）．3．血液検査はT-cho 224（143-293）mg/dl，HDL 52.5（39-83）mg/dl，LDL 147.5（85-187）mg/dl，中性脂肪119（55-259）mg/dl，AST 24（13-40）U/L，ALT 25.5（8-58）U/L，γGTP 39.5（15-244）U/L，空腹時血糖96.5（88-132）mg/dl，HbA1c 5.6（4.9-6.4）％，尿酸6.9（4.0-9.9）mg/dl，血小板24.6（206-30.9）万/mm3，Cr 0.8（0.5-1.1）mg/dl．4．過去1年間で体重が2kg以上増加したのは4例（19.0％），2kg以上減少したのは1例（4.8％）．5.1年前の超音波所見との比較では，左葉優位例は4例中3例で前年受診しており，1例は変化無し，2例は全体脂肪肝+S4低脂肪域．右葉優位例は10例中8例で前年受診しており，3例で変化無し，3例で全体脂肪肝+S4低脂肪域，1例でS5のみ脂肪肝．
【結論】
区域性脂肪肝は男性に多く，メタボリック症候群として比較的軽症例が多かった．前年との比較では体重が増減した症例が4例あり，またS4低脂肪域となっていた例が5例見られた．