Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
消化器その他

(S514)

術中超音波 elastorgaphyによる腹腔内病変の硬度測定について

Evaluation of stiffness of abdominal lesions by intraoperative ultrasound elastography

石川 正志, 江藤 祥平, 田代 善彦, 松山 和男, 宮内 隆行, 大塩 猛人, 阿部 俊夫, 久保 仁美

Masashi ISHIKAWA, Shohei ETO, Yoshihiko TASHIRO, Kazuo MATSUYAMA, Takayuki MIYAUCHI, Taketo OSHIO, Toshio ABE, Hitomi KUBO

1公立学校共済組合四国中央病院外科, 2公立学校共済組合四国中央病院検査科

1Surgery, Shikoku Central Hospital, 2Clinical Laboratory, Shikoku Central Hospital

キーワード :

病変の悪性度と組織の硬さには相関があることが知られており,これまで術中の消化管の腫瘍の悪性度や附属リンパ節診断では,触診での硬さが,診断の重要な要素であった.しかし,腹腔内臓器やその病変の硬さを絶対値として表した報告はほとんど見られず,どのような因子が腫瘍の硬さを規定しているかも不明である.また最近消化管の手術は腹腔鏡補助下になりつつあるが,腹腔鏡下手術での皮切は最大5cm程度であり,術中触診は不可能に近く,以前よりも触診以外での正確で簡便な病変の硬度の測定法が求められている.そこで我々は,術中超音波elastographyを消化管癌の手術に臨床応用し,術中超音波elastographyがLN転移の診断に有効なことを報告してきた.今回症例をさらに積み重ね,各種腹腔内病変を対象として腫瘤の硬さについて評価し,検討した.
【対象と方法】
過去3年間に当院で開腹手術をうけた136例(胃癌37例,大腸癌53例,HCC12例,転移性肝癌10例,肝血管腫3例,胆道癌6例,腫瘤形成性胆嚢炎4例,膵癌11例)を対象とした.術中超音波elastographyは日立アロカの超音波機器(AVIUS)を用い,脂肪層,腫瘍のひずみをそれぞれB,Aとして,B/A比を算出しstrain ratioで客観的に評価した.また,B/C比と腫瘍の肉眼的所見および病理所見を比較検討した.
【結果】
胃癌および結腸癌のstrain ratioは5.5±4.4,5.4±4.8で有意差は見られなかった.LN転移は胃癌で19例,大腸癌で25例見られた.LNのstrain ratioは胃癌症例では転移+で6.9±4.4,転移-で1.6±0.6であり,大腸癌ではそれぞれ5.6±4.7,1.6±0.5で有意差がみられた.strain ratioのcut off値を2.0とするとLN転移の感度,特異度,正診率は胃癌でそれぞれ100%,92%,96%で,大腸癌で94%,77%,82%%とCTやMRIに比べ最も良好となった.また,その他のstrain ratioでは,HCC3.7±1.3例,転移性肝癌8.6±2.1例,肝血管腫2.5±1.4,胆道癌8.0±3.4,腫瘤形成性胆嚢炎2.7±0.5,膵癌13.9±7.6であった.一方,胃癌および結腸癌で腫瘍のマクロ所見とstrain ratioを検討すると腫瘍の大きさ,壁深達度,病期,リンパ節転移の有無等はstrain ratioと相関は見られなかった.腫瘍のミクロ所見とstrain ratioを検討すると腫瘍の間質(med<int),INF(a<b<c),ly(0<1<2+3),V(0+1<2+3),組織型(tub1<por)でそれぞれ有意差が見られた.また胃癌のBor4型は4例見られたが,strain ratioは2型や3型に比べ有意に小さかった(3.1±1.6 vs 5.9±4.1).
【結語】
消化器癌の硬さは,膵>胆道,肝転移>胃,大腸>HCCの順であった.腫瘍の硬さを規定する因子は,腫瘍の間質量,浸潤様式,組織型であった.スキルス胃癌は硬がんといわれるが,実際は通常の胃癌よりは柔らかかった.