Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
消化器その他

(S513)

当院の腹部救急疾患における超音波検査とCT検査の施行状況

CT and US of Abdominal Emergency in Our Hospital

若杉 聡, 梅木 清孝, 保坂 祥介, 佐藤 晋一郎, 森本 喜博, 久保 浩一郎, 緒方 賢司, 大野 光浩, 田中 みのり, 石田 秀明

Satoshi WAKASUGI, Kiyotaka UMEKI, Shousuke HOSAKA, Shinichirou SATOU, Yoshihiro MORIMOTO, Kouichirou KUBO, Kenji OGATA, Mitsuhiro OONO, Minori TANAKA, Hideaki ISHIDA

1千葉西総合病院消化器内科, 2千葉西総合病院外科, 3千葉西総合病院病理科, 4千葉西総合病院生理検査室, 5秋田赤十字病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Chibanishi General Hospital, 2Department of Surgery, Chibanishi General Hospital, 3Department of Clinical Pathology, Chibanishi General Hospital, 4Department of Medical Technology, Chibanishi General Hospital, 5Departement of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【対象と方法】
2015年9月1日から12月31日の期間に当院消化器内科および消化器外科に緊急入院となった腹部救急疾患192例(消化管出血を除外)である.これら192例において,診断時に腹部超音波検査(以下US)が行われているか,腹部CT検査(以下CT)が行われているかを検討した.さらにUS,CTの両方が行われている症例について,どちらの検査が正確に病変部を描出しているかを検討した.なお,今回の検討では,CTは非造影,造影の区別なく検討した.
【結果】
急性虫垂炎は最も多く40例であった.以下,急性胆管炎39例,イレウス24例,急性胆嚢炎20例,感染性腸炎16例,急性膵炎14例,虚血性腸炎8例,大腸憩室炎8例,消化管穿孔6例,肝膿瘍4例,その他12例であった.これらのうち,急性虫垂炎,急性胆管炎,イレウス,急性胆嚢炎,感染性腸炎,急性膵炎,虚血性腸炎,大腸憩室炎について,US,CTを対比した.急性虫垂炎40例中,診断時にUSのみ行われたの症例は6例,CTのみ行われた症例は19例,US,CTともに行われた症例は15例であった.US,CTともに行われた症例15例中,USが正確に病変を描出していた症例は1例で,残り14例では,CTがUSと同等ないし,USよりすぐれて病変部を描出していた.救急の現場では,急性虫垂炎40例中33例においてCTが主力になっていた.同様に検討すると,急性胆管炎39例中36例でCTが診断に寄与していた.イレウス24例中23例は主にCTで診断されていた.急性胆嚢炎20例中18例が主にCTで診断されていた.感染性腸炎16例中14例で,診断の主力はCTであった.急性膵炎14例中13例においてCTで診断されていた.虚血性腸炎は8例であったが,CTが8例全例で診断に寄与していた.大腸憩室炎でも,8例中7例が主にCTで診断されていた.
【考察】
救急の現場では,残念ながらCTがUSより頻繁に使用されており,CTが診断の主力であった.しかし,超音波検査は救急の現場で有用性の高い検査であることも事実である.以下にCTよりUSが有用だった症例を提示する.
【症例1】
45歳,男性.右季肋部痛を主訴に当科救急外来を受診した.初診時血液検査では,黄疸と肝胆道系酵素の上昇を認めたが,腹部CT(非造影像)では,胆嚢壁に軽度の肥厚を認める以外に胆道に異常所見を認めなかった.腹部超音波検査を行ったところ,胆嚢および肝外胆管に多数の結石像を認めた.ERCPでも同様に胆嚢,胆管に多数の造影欠損像を認めた.内視鏡的乳頭切開術を行い,胆管結石を除去するとともに,腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.
【症例2】
66歳,男性.悪寒,戦慄を主訴に当科を受診した.既往歴で,20歳代で胆嚢摘出術を受けている.初診時の血液検査所見では,黄疸と肝胆道系酵素の上昇および強い炎症所見を認め,急性胆管炎と診断された.腹部CT検査では,肝左葉および胆嚢の切除後であった.ERCPを行ったが,乳頭部は確認できたが,胆管は造影できず,胆管切除後の可能性があった.腹部超音波検査では,総胆管,胆嚢,肝左葉切除後で,胆管に空腸が吻合されていることがわかった.さらに肝内胆管に結石を多数認め,門脈に決戦があることも判明した.本症例は全身状態が不良で,造影超音波を行うことができないまま死亡の転帰をとったが,剖検で肝内胆管結石と門脈血栓が証明され,超音波検査が有用と思われた.
【結語】
救急現場では,腹部疾患の診断の主体はCTであるが,腹部超音波検査が有用な症例も多数あると思われた.夜間の救急では超音波検査に熟練した医師,技師不在のまま診療が行われていることが多いため,今後腹部超音波検査の教育が重要と再認識した.