Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
消化器その他

(S512)

大学病院における腹部超音波検査精度の検証

Verification of accuracy of abdominal ultrasonography in university hospital

的野 智光, 永原 蘭, 松木 由佳子, 山根 昌史, 岡本 敏明, 三好 謙一, 杉原 誉明, 孝田 雅彦, 磯本 一

Tomomitsu MATONO, Ran NAGAHARA, Yukako MATSUKI, Masahumi YAMANE, Toshiaki OKAMOTO, Kenichi MIYOSHI, Takaaki SUGIHARA, Masahiko KODA, Hajime ISOMOTO

鳥取大学医学部附属病院消化器内科

Gastroenterology, Tottori University Hospital

キーワード :

【目的】
腹部超音波検査は,放射線被曝や苦痛もなく装置も簡便なことから腹部臓器の難治癌の早期発見,診断に有用である.しかし,超音波検査における精度や有効性の評価はなされておらず,その診断能は検査環境や検査施行者の技術レベルに依存している.今回我々は,大学病院における腹部超音波検査スクリーニングにおいて腹部超音波検診判定マニュアル(案)の有用性を検証することを目的とする.
【方法】
肝臓専門医3名(肝臓内科に従事し,5年以上の経験がある医師)および肝臓内科に従事開始したレジデント3名(5年目の医師)の計6名の医師が行った腹部超音波検査において,腹部超音波検診判定マニュアル(案)を満たした検査が施行されているかどうかを調査した.各医師が施行した検査のうち,ランダムに抽出した検査各10例ずつを検証し,専門医とレジデントの間で検査時間,撮影枚数,走査法による記録(16断面)の有無,体位変換の有無について比較検討した.腹部超音波検診判定マニュアル(案)中の走査法による撮影記録断面例16画像を撮影適当断面として採用した.検証には,超音波専門医2名による判定を行った.
【結果】
全60腹部超音波検査の平均検査時間は907±385秒で,平均撮影数は37.3±10.0枚であった.走査法による平均記録断面数は13.7±2.1であり,撮影率は85.7%であった.体位変換は,70%に行われていた.専門医とレジデントを比較すると,平均検査時間は専門医で606秒,レジデントで1208秒(p<0.0001),平均撮影数は専門医で43±8枚,レジデントで31.6±8.6枚(p<0.0001),平均記録断面数は専門医で15.1±1.1(94.7%),レジデントで12.3±1.8(76.7%)(p<0.0001)であった.走査法による撮影断面・撮影率(専門医:レジデント(%))は,心窩部横走査~右肋弓下走査(肝静脈)(100:63.3),右肋間走査(肝臓・門脈本幹分岐部)(80.0:53.3),右肋間走査(肝臓・前区域)(90.0:66.7),右肋間走査(肝臓・後区域)(90.0:63.3),心窩部縦走査(肝外胆管・膵臓)(80.0:46.7),心窩部斜走査(膵臓・尾部)(96.7:16.7),左肋間走査(脾臓)(100:86.7)の撮影において,専門医とレジデントの間に差があった(カイ2乗検定).その他の走査断面では差はなかった.
【考察】
マニュアルでは,検査時間は6~7分が標準とあるが,大学病院におけるスクリーニング検査では専門医においても平均検査時間は10分を超えていた.専門医とレジデントの腹部超音波検査走査法は,左右肋間走査の撮影技術に差があると推測された.加えて,レジデントにおいては心窩部斜走査における膵尾部の描出がきわめて不良であり,今後左右肋間走査および膵尾部描出の指導が必要であり,技術向上が必要と考えられた.
【結語】
大学病院での腹部超音波検査において,専門医は超音波検診判定マニュアルを十分満たした検査が行われていたが,レジデントではさらなる修練が必要と考えられた.