中村 雅美, 金 浩敏, 今里 光伸, 飯干 泰彦, 山村 憲幸, 出村 公一, 畠野 尚典, 今北 正美, 位藤 俊一, 伊豆蔵 正明

Masami NAKAMURA, Ho Min KIM, Mitunobu IMAZATO, Yasuhiko IIBOSHI, Noriyuki YAMAMURA, Kouichi DEMURA, Naonori HATANO, Masami IMAKITA, Toshikazu ITOU, Masaaki IZUKURA

¹地方行政法人りんくう総合医療センター検査科, ²地方行政法人りんくう総合医療センター外科, ³地方行政法人りんくう総合医療センター病理課

¹Clinical Laboratory, Rinku General Medical Center, ²Surgery, Rinku General Medical Center, ³Pathology, Rinku General Medical Center

キーワード :

【背景・目的】
虫垂粘液嚢腫は虫垂が閉塞し内腔に粘液が貯留する病態であるが腹部症状を呈し虫垂炎と鑑別を要する場合では診断に難渋することも多い．また破裂や粘液の漏出により腹膜偽粘液腫をきたし治療困難となる例もあり，慎重に診断・治療を行う必要がある．今回われわれは虫垂粘液嚢腫と病理組織学的に診断された画像所見について検討した．
【対象と方法】
2011年10月～2016年12月に当院で手術を施行され，病理組織学的に虫垂粘液嚢腫と診断された12例．使用装置は東芝メディカル社製Aplio XG，Aplio 500．使用探触子3.5,6.0 MHzコンベックス，7.5,10.0MHzリニアプローブで同時期に手術を施行された虫垂炎129例を比較対象とした．
【結果】
平均年齢64.9歳．男性3例，女性9例．発見動機：腹痛3例，他疾患精査中発見9例．術前診断では虫垂炎2例，虫垂粘液嚢腫10例．超音波検査所見虫垂直径平均25.8mm，虫垂炎の平均直径平均9.5mmと比較して大きかった．壁層構造に一部でも不整6例．膿瘍を疑う低エコー域3例，穿孔の疑い所見2例．腫瘤壁に石灰化2例，壁層に血流シグナル2例．周囲組織浮腫3例．虫垂内腔像：無エコー4例，微細エコー4例，onion skin sign陽性3例．嚢胞状領域含む充実性腫瘤1例．病理組織学的検査では単純性粘液嚢胞1例，虫垂粘液腺腫8例，虫垂粘液腺癌3例．腹痛を有した術前に虫垂炎と診断された2例と虫垂粘液嚢腫と診断された1例で炎症反応や腫瘤径には差異は認めず壁層構造も不整であった．内部エコー像は前者で微細であり後者では無エコーである点が異なる点であった．前者の一例では虫垂の憩室から発生した虫垂粘液嚢腫であり，腹痛症例3例中2例で症状改善後も嚢胞状腫瘤は残存していた．
【考察】
虫垂粘液嚢腫は虫垂切除症例の0.08～0.40％と頻度の低い疾患である．腹部症状を有する場合には虫垂炎との鑑別は困難とされる．画像上腫瘤壁に石灰化や13mm以上の腫大で虫垂粘液嚢腫を疑うとされ1），内部エコー像は，Kamedaらによると虫垂瘤ではonion skin sign（+）では感度，特異度，正診率が63,100,99％であったとされる2）．無症状例の場合では虫垂由来と同定された場合，腫瘤直径，内部エコー，石灰化を考慮することで虫垂粘液嚢腫を疑うことが可能であると考えられた．有症状では壁層構造，内部無エコー，またはonion skin sign，虫垂直径を考慮し虫垂粘膜嚢腫を念頭に慎重に診断することが必要であり，経過観察にて炎症反応改善後も腫瘤が残存する場合においても鑑別診断として考慮する必要があると考えられた．
1）Bennett GL，et al：CT diagnosis of mucocele of the appendix in patients with acute appendicitis．AJR Am J　Roentgenol　2009；192：W103-110
2）Kameda T，et al：Evaluation of whether the ultrasonographic onion skin sign in specific for the diagnosis of an appendiceal mucocele.J Med Ultrasonics 2014；41:439-443