Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管2

(S511)

潰瘍性大腸炎におけるUCEISを用いた内視鏡評価と体外式超音波検査による壁厚の関係

Relationship between Endoscopic Evaluation using UCEIS and Wall Thickness by Transabdominal Ultrasonography in Ulcerative Colitis

松本 和久, 丹伊田 卓, 島崎 洋, 北口 一也, 石本 博基, 杉山 浩平, 宮川 麻希, 那須野 正尚, 田中 浩紀, 本谷 聡

Kazuhisa MATSUMOTO, Suguru NIIDA, Hiroshi SHIMAZAKI, Kazuya KITAGUCHI, Hiroki ISHIMOTO, Kouhei SUGIYAMA, Maki MIYAKAWA, Masanao NASUNO, Hiroki TANAKA, Satoshi MOTOYA

1札幌厚生病院医療技術部放射線技術科, 2札幌厚生病院IBDセンター

1Department of Radiological Technology, Sapporo Kosei Hospital, 2IBD Center, Sapporo Kosei Hospital

キーワード :

【目的】
潰瘍性大腸炎(UC)の活動性評価は下部消化管内視鏡検査(CS)が基準となるが,侵襲的な検査であり治療や経過観察のため繰り返し施行されることから,患者にとっては大きな負担となる.一方,体外式超音波検査(US)は,特別な前処置を必要とせず非侵襲的で繰り返し行うことができるため,患者の負担を軽減させることが可能となる.今回我々はUCに対してCSとUSの所見を比較し,UCの活動性評価としてのUSの有用性を後方視的に検討した.
【方法】
対象は2013年5月から2015年10月の間に当院にてUSを施行し,その後7日以内にCSを施行したUC患者90例である.大腸を上行結腸(A),横行結腸(T),下行結腸(D),S状結腸(S),直腸(R)の5segmentに分け,USによりsegment毎に最大となる壁厚を計測した.またCSでは内視鏡所見により血管透見像(0-3),出血(0-2),びらん/潰瘍(0-3)の3項目のスコアの合計で評価するUlcerative Colitis Endoscopic Index of Severity(UCIES;0-8)を用いた.使用装置は東芝社製Aplio400/500,日立アロカ社製Ascendusを用い,USの前処置は検査当日からの絶飲食とし,下剤や経口腸管洗浄液は用いていない.
(検討①)各segmentのUSによる描出率を検討した.またUCEISの各評価項目と壁厚を比較検討した.
(検討②)US所見による壁厚>4mm(直腸のみ>6mm)を「US所見あり」と定義し,UCEISの各評価項目および合計スコアにおける有所見率を検討した.
【結果】
対象症例は男性47例・女性43例,平均年齢42.0歳,平均罹病期間5.9年,診断時の病型は全大腸炎型60例,左側大腸炎型25例,直腸炎型5例であった.
(結果①)各segmentの描出率はA:100%,T:98%,D:100%,S:100%,R:62%であった.描出可能であった392segmentにおけるUCEISの各評価項目と壁厚の関係は,血管透見像スコア(0:2.6mm,1:4.2mm,2:6.4mm,3:9.4mm),出血スコア(0:3.7mm,1:6.4mm,2:6.8mm),びらん/潰瘍スコア(0:3.2mm,1:6.1mm,2:6.7mm,3:7.6mm)であった.合計スコアと壁厚の関係では0:2.6mm,1:4.1mm,2:3.5mm,3:5.8mm,4:6.6mm,5:6.7mm,6以上:8.3mmであり,UCEISスコアの重症化に伴い壁厚が上昇する傾向を認めた.
(結果②)USの有所見率は血管透見像スコア(0:24%,1:48%,2:84%,3:100%),出血スコア(0:43%,1:79%,2:100%),びらん/潰瘍スコア(0:33%,1:76%,2:97%,3:100%)であった.合計スコアに対するUSの有所見率は0:25%,1:46%,2:32%,3:73%,4:84%,5:100%,6以上:100%であった.UCEISスコア3以上をCS所見ありとした場合のUSの感度は87%,特異度は66%,陽性反応的中率64%,陰性反応的中率88%であった.
【結語】
UCにおけるCS所見の重症化に伴い大腸の壁厚は上昇する傾向を認め,UCEISスコア3以上に対するUSの感度は87%と比較的良好であった.ただし,より軽度の活動性所見に対する拾い上げには壁厚のみでの評価では十分とは言えず,他の要素を加味する必要性が示唆された.