福岡 陽子, 尾原 義和, 古川 敦子, 西本 美香, 山本 克人

Yoko FUKUOKA, Yoshikazu OHARA, Atsuko FURUKAWA, Mika NISHIMOTO, Katsuhito YAMAMOTO

高知医療センター循環器内科

Division of Cardiology, Kochi Health Sciences Center

キーワード :

【背景】
圧負荷により左室肥大（LVH）を来す代表的な疾患として，大動脈弁狭窄症（AS）及び高血圧が挙げられる．高血圧性心疾患（HHD）は体血管による負荷が原因であるが，ASは大動脈弁及び体血管双方の負荷が原因となる．この二つの原因により来した左室肥大の差異についての報告は少ない．近年，新しい後負荷指標として，弁-大動脈インピーダンス（Zva）が提唱され，ASの予後評価として有用とされている．
【目的】
圧負荷により左室肥大を来した大動脈弁狭窄症と高血圧性心疾患の左室機能の比較検討を行った．
【方法】
対象はHHD症例38名及びAS症例36名．2D speckle-tracking法にてglobal LV strain（longitudinal and circumferential）を計測した．左室後壁厚＞12mmを左室肥大と定義した．大動脈弁と体血管を合わせた左室後負荷の指標としてZvaを求めた（Zva=（MPG+SBP）/SVi）．
【結果】
対象をZvaの値で2群に分類した（low Zva（Zva＜3mmHg ml/m²，n=25），high Zva（Zva≧3mmHg ml/m²，n=49））．High Zva群で有意にAS症例が多かった（p＜0.05）．Global LV longitudinal strain（GLS）はhigh Zva群で有意に低下していたが，Global circumferential strain（GCS）は両群間に差は認めなかった．
High Zva群をさらに2群に分類した（AS群（n=28），HHD群（n=21））．左室心筋重量係数や左室駆出率は両群間に有意差を認めなかった．E/EaはAS群で有意に高値であった（p＜0.00001）．GLSはAS群で有意に低下していた（p＜0.0001）が，GCSは両群間に有意差は認めなかった．AS群において，GLSとZvaは有意な相関関係であった（r=0.44，p＜0.05）．
【結論】
同程度の左室後負荷による左室肥大であっても，HHD症例と比較してAS症例で左室長軸方向の心機能が低下している．