遠藤 桂輔, 丸尾 健, 横田 佳代子, 天野 秀生, 久保 俊介, 筑地 日出文, 福 康志, 後藤 剛, 門田 一繁

Keisuke ENDO, Takeshi MARUO, Kayoko YOKOTA, Hideo AMANO, Syunsuke KUBO, Hidefumi CHIKUJI, Yasushi FUKU, Tsuyoshi GOTO, Kazushige KADOTA

¹公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院臨床検査技術部, ²公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院循環器内科

¹Clinical examination and Technology, Kurashiki Central Hospital, ²Cardiovascular internal medicine, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【背景】
近年，大動脈弁狭窄症（AS）に対して，経カテーテル的大動脈弁植え込み術（TAVI）が施行されるようになり，ASの治療は劇的に変化している．一般的に，ASに対して人工弁置換を施行し，狭窄を解除することで，心拍出量が増加するといわれているが，その後の短中期的変化を経時的に見た報告はない．そこで，今回，TAVI後の心拍出量の短中期的変化を経胸壁心エコー検査を用いて検討した．
【方法】
2012年1月から2015年10月の期間で，TAVIを施行し，1年間経過観察が可能だった連続30例（男性：7例，年齢:85±6歳）を対象とした．TAVI術前，術後1週間（1W），術後1ヶ月（1M），術後6ヶ月（6M），術後1年（1Y）に各々経胸壁心エコー検査を施行した．指標として，左室流出路径，左室駆出血流速波形の時間速度積分値から求めた一回拍出量を体表面積で除した一回拍出量係数（SVI），連続の式から求めた有効弁口面積を体表面積で除した有効弁口面積係数（AVAI）を計測し，各々の経時的変化を評価した．
【結果】
TAVI術前と術後1Wを比較すると，SVI（47±11 vs. 55±12ml/m2，p＜0.001）（図），AVAI（0.43±0.09 vs. 1.29±0.33cm2/m2，p＜0.001）は有意に増加していた．また，術後1Wと1Y後を比較すると，SVI（66±14 ml/m2，p＜0.001）は有意に増加（図）していたが，AVAI（1.37±0.34 cm2/m2，p=0.125）は増加しているものの有意ではなかった．術後1Wと1Y後の間のSVIの変化（10.6±11.1 ml/m2）とAVAIの変化（0.08±0.32 cm2/m2）には有意な相関（r=0.63，p＜0.001）を認めた．
【結語】
TAVI術後の一回拍出量は，術直後とさらに1年後にわたって徐々に有意に増加し，有意ではないが有効弁口面積も増加していた．術直後の変化はASの解除による影響が考えられ，1年後に一回拍出量の有意な上昇を認めた原因は不明確だが，左室心筋の退縮や拡張能の改善が関与しているのかもしれない．