Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心内膜炎

(S502)

三尖弁の巨大疣腫から肺へseptic emboliを来たした三尖弁孤発性感染性心内膜炎の2症例

Two cases of isolated tricuspid valve endocarditis, concurrent with pulmonary septic embolism from the giant vegetation

正岡 佳子, 檜垣 忠直, 臺 和興, 中間 泰晴, 西岡 健司, 嶋谷 祐二, 吉田 英生, 桑本 恵里奈, 飯伏 義弘

Yoshiko MASAOKA, Tadanao HIGAKI, Kazuoki DAI, Yasuharu NAKAMA, Kenji NISHIOKA, Yuji SHIMATANI, Hideo YOSHIDA, Erina KUMAMOTO, Yoshihiro IBUSHI

1広島市立広島市民病院臨床検査部, 2広島市立広島市民病院循環器内科, 3広島市立広島市民病院心臓血管外科

1Department of Clinical Laboratory, Hiroshima City Hiroshima Citizens Hospital, 2Department of Cardiology, Hiroshima City Hiroshima Citizens Hospital, 3Department of Cardiovascular Surgery, Hiroshima City Hiroshima Citizens Hospital

キーワード :

【はじめに】
先天性心疾患,弁置換,device留置などの背景を有さない右心系単独の感染性心内膜炎(IE)は薬物中毒の少ない本邦では稀である.三尖弁に巨大疣腫を形成し肺へのseptic emboliを併発した,三尖弁孤発感染性心内膜炎の2症例を経験したので報告する.
【症例1】
53歳,男性.2ヶ月前より発熱,感冒様症状を繰り返す.40℃の発熱と失神あり紹介.心雑音無し.CTで両側肺野胸膜直下の浸潤影と,肺動脈末梢の造影欠損を認めた.血液培養でstreptococcus gordoniiが検出され,右心系IEによる肺へのseptic emboliが疑われ,経胸壁心エコー図(TTE)を施行.三尖弁前尖に25mmの疣腫を認めたが,三尖弁逆流は軽症だった.経食道心エコー図(TEE)では可動性を有する数個の棍棒状エコーが三尖弁の疣腫表面に付着し(Fig1-a,),3DTEEにて疣腫は三尖弁前尖の右房側に付着していた(Fig1-b).シャント疾患は無く,左心系にはIEを疑う所見は認めなかった.肺へのseptic emboliを繰り返している状態と判断され,疣腫切除術及び三尖弁形成術を施行した.三尖弁前尖に25x15mmの疣腫を認めた.術後のTTEではIE再発の所見無く三尖弁逆流もtrivialだった.第36病日退院となった.
【症例2】
27歳,女性.2週間前より発熱,咳嗽が出現し肺炎疑いで紹介.心雑音無し.CTで肺野に多発浸潤影を認め入院.血液培養でstreptococcus sp.が検出され,TTE施行.三尖弁の27mmの可動性疣腫と中等症三尖弁逆流を認め(Fig2),IEと診断された.疣腫切除術及び三尖弁形成術を施行し,中隔尖から前尖にかけて30mmの疣腫を認めた.術後のTTEではIE再発の所見無く三尖弁逆流は軽度だった.第39病日退院となった.
【考察】
当院での2007年から2016年のIEは54例であるが,右心系IEは4例と少なく,先天性心疾患,弁置換,device留置等の既往を有しない三尖弁孤発IEは2例のみであった.通常右心系IEは左心系IEに比べ予後が良いとされている.しかし弁通過流速が遅いため弁逆流を来しても心雑音が聴取しにくく早期診断が困難であり,発見が遅れると疣腫が巨大化しやすいとの報告もある.2例とも心雑音無く,三尖弁の巨大疣腫から肺へのseptic emboliを併発し塞栓源検索目的のTTEで初めてIEと診断され,手術療法にて救命できた.発熱患者で呼吸器症状を繰り返し肺へのseptic emboliが疑われる場合には,心雑音が無くても右心系IEの可能性を疑い,早めにTTEを施行する必要があると考えられた.