Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心内膜炎

(S501)

鱧咬傷を契機として発症した感染性心内膜炎の1例

One case of the infective endocarditis that occurred with a pike conger bite

瀬野 弘光, 山田 博胤, 大櫛 祐一郎, 西條 良仁, 楠瀬 賢也, 佐田 政隆

Hiromitsu SENO, Hirotsugu YAMADA, Yuichiro OKUSHI, Yoshihito SAIJO, Kenya KUSUNOSE, Masataka SATA

徳島大学病院循環器内科

Department of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital

キーワード :

【症例】
62歳,男性.職業は鮮魚の運送.1日日本酒4合程度の大酒家.
【現病歴】
1-2か月前より関節リウマチに対し近医でステロイドを処方された.また,受診2週間前に鱧に左小指を咬まれ受傷した.その後39度程度の発熱を繰り返し,呼吸困難感の増悪を認めたため前医を受診した.CT検査で両側胸水と肺鬱血を認め,心エコー検査で大動脈弁に付着する疣腫を認めたことから感染性心内膜炎が疑われ,精査加療目的に当院紹介となった.
【現症】
身長163cm,体重65kg,脈拍92回/分・整,血圧:120/34mmHg.体温36.5度.明らかな拡張期雑音は聴取せず,両側肺野にcoarse crackleを聴取する.心電図は正常洞調律正常軸,胸部Xpは心胸郭比63%.両側鬱血影著明.Osler結節,Janeway斑を認めない.
【血液検査】
WBC 9700/μl,CRP 4.37mg/dlと炎症反応の上昇あり.TP5.6g/dl,ALB 2.0 g/dlと低栄養
【経過】
心エコー検査では大動脈弁は3尖共に弁尖を中心に多数の疣腫の付着を認め,無冠尖に最大11×10mm程度の大きな菌塊の付着を認めた.また,無冠尖は一部穿孔しており,弁破壊に伴う重症の大動脈弁逆流症を呈していた.明らかな弁輪部膿瘍は認めなかったが,逆流ジェットのあたる左室心室中隔の一部にに疣腫の付着を認めた.三尖弁にも弁尖の肥厚と腱索に付着する疣腫を認めたことから,大動脈弁および三尖弁の感染性心内膜炎と診断した.左小指の鱧咬傷は膿瘍を伴う潰瘍形成を認め,感染の原因として疑われた.頭部MRI検査及び造影CT検査で明らかな塞栓を認めなかったが,弁膜症による心不全の状態であり,同日緊急で大動脈弁置換術,三尖弁置換術が施行した.入院時の血液培養及び切除弁の培養からは口腔常在菌であるStreptococcus oralisが検出された.左小指の鱧咬傷後の潰瘍に付着する膿の培養からはMorganella morganii,Proteus vulgaris,Staphylococcus aureus,Streptococcus constellatusが検出されたが,Streptococcus oralisは検出されなかった.術後は保存的加療の方針となりデブリードマンおよび創部洗浄を繰り返した後,第20病日に分層植皮術が施行された.口腔内には明らかな齲歯や重度の歯周病は指摘されなかった.弁置換術後はPCGによる抗菌治療を継続した.術後敗血症の再燃なく第40病日にリハビリ目的に転院となった.
【考察】
動物咬傷による創は動物の口腔内に存在する細菌が,歯牙が食い込む時に深くまで付着することや,創傷の入り口が狭く,創内部が閉鎖腔となって,血液や壊死組織で細菌が増殖しやすくなることから感染が高い確率で起きるとされる.本症例では血液培養および切除した弁より口腔常在菌であるStreptococcus oralisが検出されており,感染性心内膜炎の起炎菌として考えられることから,鱧咬傷が直接感染の原因となった可能性は低い.しかし,創部から口腔常在菌のStreptococcus constellatusが検出されたことからも鱧咬傷による創が唾液等に混入した菌の侵入門戸となった可能性が考えられる.鱧咬傷を契機として感染性心内膜炎を発症した1例を経験したので文献的な考察を加え詳細を報告する.