Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心内膜炎

(S500)

急性呼吸窮迫症候群を呈したLoffler心内膜炎の一例

A Case of Acute Respiratory Distress Syndrome accompanied by Loffler Endocarditis

諏訪 惠信, 宮坂 陽子, 谷口 直樹, 前羽 宏史, 塩島 一朗

Yoshinobu SUWA, Yoko MIYASAKA, Naoki TANIGUCHI, Hirofumi MAEBA, Ichiro SHIOJIMA

関西医科大学第二内科

Department of Medicine II, Kansai Medical University

キーワード :

【はじめに】
Loffler心内膜炎は,好酸球性心内膜心筋線維症とされ,末梢血中に増加した好酸球(>1500/μL)が心内膜・心筋に浸潤し心機能に障害を来したものと定義される.最近では心臓MRIを用いた病期分類が提唱され,心臓超音波検査などでは発見不可能な極早期の段階での診断も可能となってきている.今回我々は,急性呼吸窮迫症候群を呈したLoffler心内膜炎の一例を経験したので報告する.
【症例】
60歳代・女性.全身性エリテマトーデス,好酸球増多症,糖尿病,特発性血小板減少性紫斑病の診断で膠原病科に通院中,全身性エリテマトーデス,好酸球増多症に対してプレドニゾロンが処方されていた.抗リン脂質抗体陽性で前脊髄動脈血栓塞栓症の既往があり,下肢運動障害によるADLの低下を認めていた.
定期通院の外来にて,軽度の動悸・呼吸苦などを自覚していたが様子観察となっていた.初回の呼吸苦の訴えから約2週間後,自宅で安静時に強い呼吸困難感を自覚したため救急要請となり当院に搬送された.来院時の血液ガス分析では著明な低酸素血症と意識レベル低下を来し緊急の気管挿管を要した.四肢末梢冷感著明で急性心不全を疑い,循環器内科に紹介となった.各種画像検査から低酸素血症の原因は,肺炎を契機とした急性呼吸窮迫症候群と診断した.また,心臓超音波検査では明らかな肺高血圧は認めないものの,左室内腔中部以下を占拠する等輝度エコーの異常構造物と一回拍出量の低下を認めた(図).左室内異常構造物によって左室容積が著明に減少しており,血行動態が非常に不安定な状態であると判断しCCUにて集約的治療を開始した.内科的治療開始後,比較的早期に全身状態は安定化し,引き続き左室内異常構造物の精査のため各種画像検査を行った.
【結語】
急性呼吸窮迫症候群に合併したLoffler心内膜炎の一例を経験し,約3ヶ月間にわたって心臓超音波検査による経過followを行った.今回我々が経験した稀な症例に,文献的考察を加えて報告する.