Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 腫瘍

(S496)

悪性リンパ腫心筋浸潤の一例

A case of cardiac metastasis of malignant Lymphoma revealed with transthoracic echocardiography

内田 亜佐美, 與子田 一輝, 荒瀬 彩夏, 鎌田 知子, 松下 一之, 加藤 央隼, 江口 紀子, 関根 泰

Asami UCHIDA, Kazuki YOSHIDA, Ayaka ARASE, Tomoko KAMATA, Kazuyuki MATSUSHITA, Hirotoshi KATOU, Noriko EGUCHI, Tai SEKINE

1千葉大学医学部附属病院検査部, 2千葉大学医学部附属病院循環器内科, 3君津中央病院循環器内科

1Clinical Laboratory, Chiba University Hospital, 2Department of Cardiovascular medicine, Chiba University Hospital, 3Department of Cardiovascular Medicine, Kimitsu Chuo Hospital

キーワード :

症例は60代男性.胸部レントゲンにて右上葉腫瘤影を指摘され,精査目的に当院を受診した.胸部CTにて右上葉に縦隔への浸潤を示唆する腫瘤および右胸水を認め,気管支鏡検査にて悪性リンパ腫が疑われた.急速な腫瘍の拡大を認めるため,化学療法を開始することとなった.化学療法前に撮影された造影CTにて,心嚢水貯留,悪性リンパ腫の心筋浸潤を疑う所見を,PET CTで右肺上葉・心膜・右胸壁・膵体部に,FDGの異常集積を認めた.悪性リンパ腫の心筋浸潤の精査目的に,第25病日に経胸壁心エコー検査(TTE)を施行した.左室心尖部の肥厚,局所壁運動低下,心筋輝度の一部上昇を認めた.また,全周性に中等量の心嚢水を認めた.
その後,COP療法が施行され,造影CTでは肺腫瘍は縮小を認めたが,心嚢水は増加傾向であった.第45病日のTTEでは,左室心尖部の壁肥厚が中隔・側壁側でより目立ち,収縮力も低下した印象で,心病変の進行が疑われた.また,心嚢水も増加し,胸部息苦しさも出現したため,心嚢穿刺が施行された.心嚢水の病理からは,中型から大型の異型細胞,CD3,CD5陽性細胞が認められた.T細胞性リンパ腫が疑われ,CHOP療法に変更された.その後はイベントなく経過し,肺腫瘍は著明に縮小した.第70病日のフォローのTTEでは肥厚していた心尖部は瘤化し,左室内血栓の形成を確認した.患者さんはその後も入院,原疾患の加療,第83日に独歩退院した.
悪性リンパ腫の心筋浸潤と診断され,TTEでリンパ腫の病勢による左室の形態変化をとらえることができた稀な一例と考えられ,症例を報告する.