Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 腫瘍

(S496)

右室流入路狭窄が腫瘍摘出術と化学療法により劇的に改善した心臓原発DLBCLの一例

Successful treatment of a primary cardiac lymphoma obstructing the right ventricular inflow tract

梅田 有理, 新保 麻衣, 渡部 久美子, 佐藤 和奏, 飯野 貴子, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Yuri UMETA, Mai SHINBO, Kumiko WATANABE, Wakana SATO, Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院循環器内科学

Department of Cardiovascular and Respiratory Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

症例は75才男性.2014年10月,誘因なく胸椎圧迫骨折を生じたが,経過観察されていた.2015年1月,易疲労感等を主訴に近医を受診した.採血上,肝胆道系酵素上昇,INR延長を認め,心臓超音波検査(UCG),CTにて心臓腫瘍,転移性副腎腫瘍,転移性骨腫瘍を認めたことから,精査加療目的に当院へ転院となった.来院時,バイタルサインは,血圧114/81 mmHg,脈拍103/分,SpO2 98%(5Lマスク)であり,肝機能障害,腎機能障害,DICを認め,いずれも近医受診から2日間の経過で増悪していた.CTにて右房内に突出する腫瘤,両副腎の腫大と胸椎の骨破壊像を認めた.UCGでは,心膜液貯留,右室壁肥厚と右房内に突出する直径5cm大の腫瘤を認めた.右室流入血流は2.1m/sであり,右室流入路狭窄と診断し,血行動態改善目的に,転院翌日心臓腫瘍摘出術を施行した.心筋への浸潤が強く腫瘍全摘は困難であったが,右房内に突出する腫瘍の一部を除去,右室流入路狭窄は解除され,全身状態は改善した.後日,手術標本より,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)と診断された.Cyclophosphamide, Prednisoloneによる化学療法を開始し,右房内に突出する腫瘍は消失し,右室壁肥厚も改善した.その後R-CHOP療法(rituximab, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisolone)を6コース行い,CRを維持していた.しかし,約9か月後,頭部CTにて腫瘍を認め,中枢神経浸潤と診断,放射線療法とMethotrexate髄注を施行されたが,徐々に骨髄不全が進行し,肺炎・敗血症を合併,発症から約10か月後に永眠された.現在,DLBCLの標準治療はR-CHOP療法とされているが,本症例は,超音波診断をもとに血行動態改善を目的とした姑息的手術を先行したことにより,安全に化学療法を施行することができた.心臓原発悪性リンパ腫で,心外病変を有する患者群のmedian overall survivalは6か月であると報告されている(Petrich A, et al. Primary cardiac lymphoma: an analysis of presentation, treatment, and outcome patterns. Cancer. 2011;117:581589.)が,本症例は,来院時すでに右室流入路狭窄による心不全を呈していたにも関わらず,姑息的手術と術後化学療法を併用することによって,それを超えた約10か月の生存期間を得ることができた稀な症例であり,ここに報告する.