Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心房機能

(S492)

心房細動におけるMitral annular calcificationの影響に関する検討

The study of the impact of Mitral annular calcification in atrial fibrillation patients

相澤 芳裕, 齋藤 佑記, 門野 越, 黒澤 毅文, 早瀬 未紗, 中井 俊子, 平山 篤志

Yoshihiro AIZAWA, Yuki SAITO, Koyuru MONNO, Takafumi KUROSAWA, Misa HAYASE, Toshiko NAKAI, Atsushi HIRAYAMA

日本大学医学部内科学講座循環器内科分野

Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
Mitral annular calcification(MAC)の存在は脳梗塞発症のリスクを増大させ,MACのサイズと脳梗塞発症リスクには正の相関関係があることが報告されている.MACが脳梗塞リスクを増加させる機序については諸説ありその一つとしてMACが心房細動のリスクとなることが報告されているが,心房細動例におけるMACの意義は明らかにされておらず,CHA2DS2-Vasc scoreや左心耳内血流速度を含めた心エコー指標に与える影響に関しても明らかではない.また我々は心原性脳塞栓症を起こしたCalcified amorphous tumor(CAT)の症例において,MACの病理組織にCATと類似した無構造な変性物を認め,MACの増大がCATの発生を惹起することによって脳梗塞リスクを高める可能性があることを報告している.MACを伴ったCATは腎障害症例に多いことが知られているが,心房細動におけるMACサイズと腎障害の関係に関してはあまり知られていない.
従って本研究の目的は,心房細動例においてMACの存在がCHA2DS2-Vasc score心エコー指標に与える影響,およびMACのサイズに影響を与える因子について検討することである.
【方法と結果】
2015年6月から2016年7月までに日本大学板橋病院で経胸壁心エコーと経食道心エコーを同時期に施行した心房細動の既往のある症例121例を,MAC(+)群(89例)とMAC(-)群(32例)に分け,患者背景と合わせて後ろ向きに解析した.
MAC(+)群はMAC(-)群と比べて高齢で女性に多い傾向にあり,腎機能(eGFR(ml/min/1.7))が有意に低値(87±29 vs 64±28,P<0.001)で,CHA2DS2-Vasc scoreは高値(2.2±1.4 vs 1.7±1.3,P=0.05)であった.左心耳内血流速度を含めた心エコー指標への影響は見られなかったが,腎機能(eGFR)障害が進行とMACのサイズには有意な相関関係を認めた(r=-0.51,P<0.001).
【結論】
心房細動例においてはMACの存在はCHADS-Vasc scoreを増加させたが,心エコー指標への影響も見られなかった.MACを有する症例では腎機能障害の進行とともにMACが増大し,脳梗塞リスクが高まることが示唆された.