英文誌(2004-)
一般口演 循環器
心房機能
(S491)
左心耳機能と左室拡張障害の関連検討
Association with Left Ventricular Diastolic Dysfunction and Left Atrial Appendage Function
時岡 浩二, 諸国 元太郎, 山本 圭亮, 小野 環, 塩見 千晴, 河合 勇介
Koji TOKIOKA, Gentaro SHOKOKU, Keisuke YAMAMOTO, Tamaki ONO, Chiharu SHIOMI, Yusuke KAWAI
岡山市立市民病院循環器内科
Cardiology, Okayama City Hospital
キーワード :
【目的】
左室拡張障害と左心耳の機能がどのような関連があるのかは,まだ明確にはなっていない.我々は,3次元経食道心臓超音波を用いて左心耳機能を評価し,左室拡張障害との関連を検討した.
【対象】
経胸壁心臓超音波検査と3次元経食道心臓超音波検査の両者を施行した連続32症例について評価した.平均年齢は55.1±13.0歳,12例が女性であった.3症例は発作性心房細動を有しており,その他の29例は洞調律であった.基礎疾患は脳梗塞が25症例,感染性心内膜炎の疑いが5例,腎梗塞が1例,弁膜症が1例であった.
【方法】
症例を左室拡張障害陽性群(n=14)と,陰性群(n=18)に分けて比較検討した.拡張障害有無の定義は2016年ASE/EACVIのガイドラインを使用した(Sherif F. Nagueh,Otto A. Smiseth,et al. Recommendations for the evaluation of left ventricular diastolic function by echocardiography: An update from the American Society of
Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging. J Am Soc Echocardiogr 2016; 29: 277-314.).経胸壁心臓超音波と3次元経食道心臓超音波はPhilips EPIQ7を使用し,左心耳の解析にはQLAB GI-3DQを使用した.3次元経食道心臓超音波の測定は左心耳拡張末期容量,左心耳収縮末期容量,左心耳面積,左心耳長径,左心耳のemptying velocityとfilling velocityを計測した.
【結果】
年齢は左室拡張障害陽性群で有意に高かった(55.8±10.3vs 49.4±13.7,P=0.008).経胸壁心臓超音波で,左室駆出率は両群間に差はなかった(P=0.816).左房容積係数は左室拡張障害陽性群で有意に拡大していた(37.9±15.9ml/m2vs 19.8±4.26 ml/m2,P=0.013).また経食道心臓超音波の結果では,左心耳拡張末期容量は左室拡張障害陽性群で有意に拡大していた(6.82±2.17mlvs 3.93±2.28ml,P=0.015).左心耳収縮末期容量,左心耳面積,左心耳長径については両群間で有意な差はなかった(P=0.223,P=0.095,P=0.585).また,左心耳拡張末期容量は,左房容積係数と正の相関を示し(r=0.502,P=0.048),左心耳のemptying velocity(r=-0.474,P=0.040)およびfilling velocity(r=-0.514,P=0.024)と負の相関を示した.
【考察・結論】
左室拡張障害は左房拡大に寄与することは以前より報告されている通りであるが,今回我々の検討では,左室拡張障害が左心耳の拡大にも関連しており,また左心耳の拡大に伴い,左心耳血流速度の低下につながる可能性が示唆された.