Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能3

(S489)

肺動脈血流速度波形パターンの数値化による肺動脈圧の定量的推定

Estimation of Pulmonary Arterial Pressure by Digitizing Pulmonary Flow Velocity Pattern

菅原 基晃, 半谷 静雄, 仁木 清美, 田中 みどり

Motoaki SUGAWARA, Shizuo HANYA, Kiyomi NIKI, Midori TANAKA

1姫路獨協大学臨床工学科, 2金城大学学長, 3東京都市大学医用工学科, 4姫路獨協大学理学療法学科

1Department of Medical Engineering, Himeji Dokkyo University, 2President, Kinjo University, 3Department of Medical Engineering, Tokyo City University, 4Department of Physical Therapy, Himeji Dokkyo University

キーワード :

【背景と目的】
肺動脈圧は,三尖弁逆流ジェットの速度と簡易ベルヌーイの式から推定される.しかし,逆流ジェットの軸に沿った圧力分布には,いわゆる圧力回復がある.このため,ジェット中の最高流速を検知して,簡易ベルヌーイの式に代入すると,右室と右房の圧較差を過大評価する.一方,肺動脈血流速度波形をいくつかのパターンに分けて,肺動脈圧の取りうる値の範囲を推定することも行われている.しかし,パターンの分類は目視によるもので,定量化されていないので,肺動脈圧の推定も定量的なものではない.本研究は,肺動脈血流速度波形のパターンの分類を数値化し,定量的な肺動脈圧推定を行うことを目的とする.
【対象】
肺動脈カテーテル検査を必要とした8例(男性4名,年齢:53.3 21.1歳)を対象とした.
【方法】
カテーテル先端電磁流速/圧力トランスジューサにより,主肺動脈の血流速度波形と圧波形を同時測定した.得られた血流速度波形をディジタイザーで数値化し,駆出期を0-100%と表示し(横軸x),流速も0からピーク値までを0-100%と表示した(縦軸y).肺動脈圧が低い場合は,肺動脈血流速度波形は,放物線で近似できる.そこで,%表示された血流速度波形を,(0,0)と(100,0)を通り,(50,100)に頂点を持つ放物線を回帰曲線として回帰分析し.回帰曲線による推定値の標準誤差Sy.xを求めた.Sy.x =[∑(yi yi’)2/(n - 2)]1/2,ここでyiは実測値,yi’は同じxに対する回帰曲線上の推定値,nはデータの数である.
【結果】
図(a)は,肺動脈ピーク圧が低い例(11 mmHg)での実測波形と回帰曲線を示す.推定値の標準誤差はSy.x = 5.9%と小さく,実測波形は放物線でよく近似される.図(b)は,肺動脈ピーク圧が高い例(45 mmHg)での実測波形と回帰曲線を示す.Sy.x = 25.9%と大きく,実測波形は放物線から大きく外れている.図(c)は,8例での肺動脈ピーク圧の実測値のSy.xに対する線形回帰を示す.線形回帰の推定値の標準誤差は,ピーク圧の5.4%であった.
【結論】
肺動脈圧が低い場合は,肺動脈血流速度波形は放物線に極めて近いが,肺動脈圧が高くなると,波形は放物線から大きく外れる.外れの程度を,放物線による曲線回帰の推定値の標準誤差Sy.xで表すと,肺動脈圧はSy.xから高い精度で推定できる.