Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能3

(S488)

初発急性心筋梗塞患者における左室長軸方向グローバルストレインの変化と予後の関連

Association between changes in left ventricular global longitudinal strain and prognosis in patients with first acute myocardial infarction

荒川 理加, 山田 晶, 中村 和広, 田中 梨紗子, 神野 真司, 杉本 邦彦, 石井 潤一, 杉本 恵子, 高田 佳代子, 尾崎 行男

Rika ARAKAWA, Akira YAMADA, Kazuhiro NAKAMURA, Risako TANAKA, Shinji JINNO, Kunihiko SUGIMOTO, Jyunichi ISHII, Keiko SUGIMOTO, Kayoko TAKADA, Ikuo OZAKI

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学臨床検査学科, 3藤田保健衛生大学医療経営情報学科, 4藤田保健衛生大学循環器内科

1Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 2Faculty of Medical Technology, Fujita Health University, 3Faculty of Medical Management and Information Science, Fujita Health University, 4Cardiology, Fujita Health University

キーワード :

【背景】
急性心筋梗塞(AMI)患者において,入院後48時間以内に施行されたスペックルトラッキング法による左室長軸方向グローバルストレイン(GLS)の値が-15.1%よりも低い場合,後の死亡率が有意に高くなることが報告されている(Eur Heart J 2010;31:1640).しかしながら,同入院期間中のGLSの変化と心イベント発生の関連性については十分に検討されていない.
【目的】
そこで今回我々は,AMI患者の入院時GLSが低値であっても,その後のGLS改善の有無によって患者の心イベント発生のリスク層別化を行うことが可能かどうか検討した.
【対象】
2011年~2014年の間に初発のAMIのため当院CCUに入院し,入院時GLSが-15.1%より低値で,さらに同一入院期間中の退院前に心エコー図検査のフォローが施行された症例を対象とした.心房細動例,GLS計測に適した画像記録ができない画質不良例は除外した.
【方法】
CCU入院後48時間以内に心エコー図検査を施行し,従来の心エコー指標に加えて,心尖部アプローチによる3断面(長軸像,四腔像,二腔像)の記録からスペックルトラッキング法を用いてGLSを計測した.使用機器はVivid E9(GEヘルスケアジャパン)またはiE33(Philips).さらに退院前7日以内にフォローの心エコー図検査を施行し,入院時と同様の手法でGLSを計測し,GLSの変化(フォローGLS-入院時GLS)を⊿GLSと定義した.さらに退院後のフォローアップ期間中に発生した心イベント[心血管死,心不全入院,虚血イベント(再梗塞,急性冠症候群)による再入院]の有無を調査した.
【結果】
59症例(男性:48例,平均年齢:65±13歳)が検討の対象となった.入院時エコーとフォローアップエコーの間隔は平均12±7日であった.また平均614±594日のフォローアップ期間中に心イベントは16例発生した(心血管死3例,心不全入院4例,虚血イベント入院9例).心イベント群(16例)と非イベント群(43例)の間で,入院時の平均年齢,左室駆出率,GLS,ピークCPKに有意差は認められなかった.しかし心イベント群では⊿GLSが有意に高値(0.7±1.9 vs -1.1±1.6%,p<0.05),つまり心イベント群でフォローのGLSが入院時よりもさらに低下する傾向が認められた.ROC曲線による⊿GLSの心イベント発生予測のカットオフは-0.1%であった(AUC 0.75,感度63%,特異度72%).対象を⊿GLS -0.1%で2群に分け(-0.1%以上:22例,-0.1%未満:37例),Kaplan-Meier法で心イベント発生率を検討したところ,⊿GLSが-0.1%以下は心イベントの発生が有意に少なかった(p<0.0001,log-rank).
【結語】
入院時GLSが-15.1%より小さくても,その後にGLSが改善した群では,改善を認めない群よりも心イベント発生率が有意に低かったことから,退院前に心エコー図検査をフォローしてGLSの変化を評価することは初発AMI患者のリスク層別化に有用であることが示唆された.