Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能2

(S486)

心筋虚血部同定を目指した心筋収縮応答伝播の超音波計測

Ultrasound Measurement of Propagation of Myocardial Contraction for Identification of Myocardial Ischemia

松野 雄也, 林 あかね, 瀧 宏文, 山本 裕朗, 平野 道基, 諸沢 薦, 下川 宏明, 金井 浩

Yuya MATSUNO, Akane HAYASHI, Hirofumi TAKI, Hiroaki YAMAMOTO, Michinori HIRANO, Susumu MOROSAWA, Hiroaki SHIMOKAWA, Hiroshi KANAI

1東北大学医工学研究科, 2東北大学工学研究科, 3東北大学医学系研究科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Engineering, Tohoku University, 3Graduate School of Medicine, Tohoku University

キーワード :

【目的】
心筋梗塞初期において心筋虚血部を非侵襲で同定することは早期診断・治療のため重要である.そのため非侵襲的で繰り返し適用可能な心筋虚血部同定法の開発が求められている.本報告では,医用超音波を用いて電気的刺激に対する心筋の収縮伝播特性の解明および心筋虚血部の同定手法の基盤となる計測技術の確立を目指す.循環器系の機能構造や大きさがヒトと類似しているブタ心臓の心室中隔壁(IVS)を対象に高精度超音波計測を行うことで,電気的刺激の伝播に伴って生じる心筋収縮応答の伝播をある基準点からの遅延時間としてBモード像上に可視化する.また,正常状態の計測後に虚血状態においても同様の計測を行うことで,正常/虚血状態における心筋収縮応答特性の差について検討する.
【方法】
開胸ブタ心臓のIVSを対象とし,Aloka社製SSD-6500を用いてRF信号を取得した.得られたデータに対して位相差トラッキング法を適用することにより,電気的刺激の伝播に伴い心筋が収縮することにより生じる微小振動を心筋の様々な位置で計測し,波形として算出した.さらに,相互相関法を用いて心筋収縮応答伝播の遅延時間分布を作成し,収縮伝播特性の定量的評価を行った.
実験の手順は以下の通りである.まず,正中開胸されたブタのIVSからのエコーを計測し,次に左室前下行枝(LAD)を指で圧迫駆血することでIVSを虚血状態にして再度計測を行った.このように2段階の計測を行い,正常状態と虚血状態において心筋収縮応答伝播の可視化,伝播速度の推定を行った.
【結果】
IVSにおける遅延時間は正常状態,虚血状態ともに心基部側から心尖部側に向かうにつれ増加しており,心筋の収縮応答が心基部側から心尖部側へ伝播している様子が確認された.図のように,心基部側と心尖部側の遅延時間の差は正常状態に比べて虚血部の方が大きく,虚血による伝播速度の低下が見られた.図の近似直線の傾きの逆数が収縮伝搬速度を示すが,正常状態では収縮伝播速度は3.6 m/sと推定されたが,冠動脈の5秒間駆血により伝播速度が1.9 m/sとなり,正常状態の約半分まで低下することが確認された.
【結論】
開胸ブタ心臓のIVSを対象とし,正常状態と虚血状態の収縮伝播特性の差を比較した.虚血による収縮伝播速度の低下が確認されたため,収縮伝播速度の差を用いることで心筋虚血部の同定できる可能性が示唆された.