大森 拓, 土肥 薫, 大沼 秀知, 杉浦 英美喜, 藤本 直紀, 石田 正樹, 山田 典一, 佐久間 肇, 伊藤 正明

Taku OMORI, Kaoru DOHI, Hidetomo OMUMA, Emiyo SUGIURA, Naoki FUJIMOTO, Masaki ISHIDA, Norikazu YAMADA, Hajime SAKUMA, Masaaki ITO

¹三重大学病院循環器・腎臓内科学, ²三重大学病院放射線科, ³三重大学病院中央検査部

¹Cardiology and Nephrology, Mie University Hospital, ²Radiology, Mie University Hospital, ³Central clinical laboratory, Mie University Hospiital

キーワード :

【背景】
心内腔容積の正確な計測は様々な場面で求められるが，従来の2次元心エコー図画像では計測精度の問題が指摘されていた．そのため3次元（3D）計測が行われるようになったが，ルーチン検査として広く普及しているとは言い難い．HeartModel A.I．（HM）は，ワンボタンのシンプルな操作による心内腔3D計測を可能としたPHILIPS社の新しいアプリケーションである．今回，HMの正確性を検証するため，その計測値と心臓MRI（CMR）計測値との比較検討を行った．
【方法】
2016年6月28日から9月7日の間にHM及びCMRによる心内腔容積計測を行った連続57例のうち，両検査間隔が30日以内，その間に心疾患イベントや治療介入がなく，かつ著しい右室拡大のない22症例を対象とした．全例で初期設定HM，及び初期設定HMに検査者が修正を加えた計測値（modified HeartModel A.I.; modi.HM）を算出した．
【結果】
年齢64.7±11歳，男性16例（72％），検査間隔3（0－13）日，冠動脈疾患12人（55％），不整脈5人（23％），心不全3人（14％），術後follow up・末梢動脈疾患がそれぞれ1人（5％）ずつであった．左室拡張末期容積（LVEDV），左室収縮末期容積（LVESV）について，HM群はどちらもCMR群より小さい傾向であったが，両群には良好な相関関係がみられた（figure）．また，modi.HM群はHM群よりCMR群との相関関係が強く，その誤差も小さかった（figure）．左室駆出率（LVEF）についても同様の傾向であったが，HM群・modi.HM群ともにCMR群との誤差は非常に小さい結果であった．左房径（LAV）については，HM群はCMR群とほぼ同等の値であった．
Image qualityが良く左室局所壁運動低下（LV asynergy）がない群（n=9）において，HM群はCMR群に対してLVEDV・LVESV値を過小評価しているものの非常に良好な相関関係があり，LVEF・LAV値はほぼ同等であった．しかし，Image qualityが良くない，またはLV asynergyがある群（n=13）は，LVEDV・LVESV・LAV値をさらに過小評価しており，LVEF値では相関関係は大きく崩れていた．
【結論】
HMにより簡便に得られるLVEDV・LVESV・LVEF・LAV値は，CMRより過小評価するものの両検査間の計測値には良好な相関関係がみられ，LVEF・LAV値ではCMRとの誤差は非常に小さかった．また，image qualityの良くない，またはLV asynergyがある症例を中心に検査者が修正を行うことで，さらに正確な容積計測が可能となることが示唆された．