Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能1

(S484)

糖尿病性神経障害と左室心筋障害との関連

Association of Left ventricular systolic dysfunction and Diabetic neuropathy

煙草 敏, 原田 昌彦, 杉山 邦男, 小原 浩, 原 文彦, 池田 隆徳

Satoshi TABAKO, Masahiko HARADA, Kunio SUGIYAMA, Hiroshi OHARA, Fumihiko HARA, Takanori IKEDA

1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター大森病院循環器内科

1Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori Hospital, 2Department of Cardiology, Toho University Medical Center Omori Hospital

キーワード :

【背景】
近年,糖尿病患者における左心機能の低下をもたらす病態が注目されており,左室長軸方向の心筋収縮能と糖尿病性腎症や糖尿病性神経障害(DN)との関連が報告されている.しかしながら,末梢神経障害の重症度と左室心筋障害との関連性は明らかでない.本研究の目的は,DNの重症度と心エコー指標ならびに臨床背景との関連性について検討すること.
【方法】
当院にて糖尿病精査入院中で左室駆出率正常(≧50%)の119名(年齢57±14歳,男/女;73/46,EF70±5%).心房細動例,虚血性心疾患例,弁膜症例,高度腎機能低下例は除外した.左室長軸方向の収縮能は2D speckle tracking法より心尖部3断面18領域のpeak strainの平均から算出した(GLS).全例で神経伝導検査を施行し,馬場分類より脛骨神経(F波潜時,運動神経伝導速度,振幅),腓腹神経(感覚神経伝導速度,振幅),腓骨神経(運動神経伝導速度,振幅)の下肢3神経より重症度評価(Ⅰ度:軽症~Ⅳ度:廃絶)した.
【結果】
119例中,80例(67%)にDNの合併を認めた.全症例をDNの有無で2群に分類し,心エコー指標ならびに臨床背景に対する多重ロジスティック回帰分析ではGLSが独立した規定因子であった(Odds 0.53,p<0.001).神経伝導検査に対する多重ロジスティック回帰分析ではF波潜時が最も神経障害存在の予測因子であった(Odds 1.44,p=0.001).さらにF波潜時とGLSは有意な負の相関関係であった(r=-0.40,p<0.001).GLSとDN重症度による比較では,DN無しに比べDNⅠ度以上で有意に低値であったが,重症度間に有意差はみられなかった.また神経障害数での比較では,下肢2神経以上でGLSは有意に低値であった(図).
【結語】
糖尿病患者においては,DNⅠ度から既に左室心筋障害が生じている可能性が示唆された.DN合併例で,下肢2神経以上の障害を認めた場合,GLSにおける左室長軸方向の収縮能評価が重要と思われる.GLSは糖尿病患者における左室心筋障害の早期診断や糖尿病神経障害の予測に有用と考える.