Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能1

(S483)

心エコー図法によるanthracycline系抗癌剤による心毒性高危険群の評価

The echocardiographic evaluateon of high-risk group of anthracicline-induced cardiotoxicity

鈴木 秀, 北向 修, 中嶋 真一

Shu SUZUKI, Osamu KITAKMUKAI, Shinichi NAKAJIMA

1東北公済病院循環器内科, 2東北公済病院臨床検査科

1Cardiology, Tohokukosai Hospital, 2Laboratory, Tohokukosai Hospital

キーワード :

【背景】
anthracycline系抗癌剤は,様々な悪性腫瘍に対し有効性が認められており,原疾患の予後改善効果があることが知られている.その一方で,頻度は少ないが重篤な副作用として心毒性があり,心不全を発症した際の3年生存率は50%と言われている.このような重篤な副作用は,早期発見と適切な管理により予後を改善することができると考えられており,このためには心エコーなどによる頻回のモニタリング,可能であれば高危険群を層別化し,フォローすることが期待される.
【目的】
今回我々は,抗癌剤投与前心エコー検査において,どのような指標が,心筋障害の危険因子となっているかを検討した.
【対象】
2016年6月22日から2016年10月27日までに当院で乳がんに対するがん化学療法としてepibirubicineを投与した連続380名(平均52.3±11.3歳)の患者.
【方法】
anthracycline系抗癌剤投与後の左室駆出率が60%以上であった正常群(n=23),60%以下となった心筋障害群(n=358)の2群に分類,抗癌剤投与前の左室収縮能の指標(B-mode左室駆出率,M-mode左室駆出率,Simpson法左室駆出率,Global longitudinal peak strain(GLPS)),拡張能の指標(E/e’,E/A,僧帽弁流入血流減衰時間(DCT))について比較検討した.
【結果】
左室収縮能を示す指標は,B-mode EF(71.9±5.0 to 66±6.7,p<0.001),simpsonLVEF(64.8±6.2 to 58.8±5.0,p<0.05)とも,正常群と比し,心筋障害群で有意に低値を示し,抗癌剤投与前後のEFの変化率(1.9±5.1 to 9.2±5.5,p<0.001)も心筋障害群で有意に増加していたが,GLPS(-22.0±1.8 to -21.2±4.6,n.s.)は両群間で有意差は認められなかった.左室拡張能を示す指標は,E/e’(7.6±1.9 to 7.2±1.6,n.s.),E/A(1.1±0.4 to 1.2±0.6,n.s.),DCT(217.2±67.3 to 221.7±60.3,n.s.)とも有意差は見られなかった.
【結語】
epibirubicine投与前の左室収縮能の低下は,anthracycline系抗癌剤による心筋障害の危険因子であり,収縮能低下例に対しては,より慎重な経過観察が必要である可能性が示唆された.