Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能1

(S483)

当院におけるファブリー病女性患者心エコー所見の特徴

Characteristics of echocardiographic findings of Fabry disease female patients in our hospital

豊田 茂, 川又 美咲, 今野 佐智代, 斎藤 史哉, 伊波 秀, 天野 裕久, 有川 拓男, 竹川 英宏, 髙田 悦雄, 井上 晃男

Shigeru TOYODA, Misaki KAWAMATA, Sachiyo KONNO, Fumiya SAITO, Shu INAMI, Hirohisa AMANO, Takuo ARIKAWA, Hidehiro TAKEKAWA, Etsuo TAKADA, Teruo INOUE

1獨協医科大学心臓・血管内科, 2獨協医科大学超音波センター, 3那須赤十字病院超音波診断部

1Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, 2Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University, 3Ultrasonic Diagnosis, Nasu Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
ファブリー病はX連鎖遺伝型式の先天性糖脂質代謝異常症であり,ライソゾーム内酸性加水分解酵素であるα-Gal Aの欠損あるいは活性低下が生じ,グロボトリアオシルセラミドが組織細胞内蓄積することにより全身の臓器が障害を受け様々な臨床症状が発現する.ヘテロ接合体女性患者ではα-Gal A活性が正常である場合があり,若年期に全身症状がほとんどなく診断が困難なことがある.特に成人期に心筋肥大が進行することにより肥大型心筋症と診断されることが少なくない.我が国での報告では肥大型心筋症と診断された男性患者のうちファブリー病の頻度は1.1%であったが,日本人女性での肥大心におけるファブリー病の頻度についての大規模な報告はこれまでない.当院ではこれまで4名のファブリー病患者を診断したがいずれも女性であり,心エコー図にて心筋肥大を認めた.そこで今回我々は当院におけるファブリー病患者の心エコー所見について検討した.
【対象・方法】
2006年から2016年までに当科でファブリー病と診断した女性患者4名の心エコー所見を検討した.4名いずれも心筋肥大を認め,内3名は肥大型心筋症として診断加療されており,1名は求心性肥大を認めた.
【結果】
2006年から2016年までに当科で心エコー図にて肥大型心筋症と診断された女性患者は150名であった.そのうち3名がファブリー病であり,頻度としては2%であった.いずれも非対称性心室中隔肥厚を認めていた.ファブリー病と診断した契機は,肥大型心筋症として他院にて治療されていたが重症心不全加療目的に当院に紹介され,心エコー図検査にて左室後壁の菲薄化を認め,精査にてファブリー病と診断された姉,そしてこの姉の診断を契機に当院で肥大型心筋症として加療されていた妹が精査の結果ファブリー病と診断された.もう1例は肥大型心筋症として経過観察中に腎機能障害が進んだため,α-Gal A活性を測定したところ低値であり精査にて診断した.
【考察】
1例のファブリー病を疑う最初の契機となったのは,心エコー図検査での左室後壁基部菲薄化である.本所見はファブリー病の心不全や突然死に先行する超音波所見として重要であり,超音波検査に従事する者は常に認識するべき所見である.近年グロボトリアオシルセラミド検査がヘテロ症例の診断に有用であると報告されているが,まだすべての施設で測定可能ではなく,やはり肥大心,特に中年期以降の女性では家族歴の詳細な聴取や組織生検が重要であり,早期診断・早期治療につなげる必要性がある.また心エコー図検査を行う際にはすでに肥大型心筋症と診断されている場合でも,再度血液検査や心電図所見等を参考に検査に臨むべきである.
【結論】
肥大心,特に女性患者ではその鑑別診断としてファブリー病の可能性を常に念頭に置く必要性がある.