Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症2

(S478)

左室緻密化障害を合併した筋ジストロフィー心筋症に対する心臓超音波検査所見の推移

Echocardiographic Findings in Dystrophic Cardiomyopathy with Left Ventricular Noncompaction

木村 公一, 大門 雅夫, 森田 啓行, 川田 貴之, 中尾 倫子, 廣川 愛美, 澤田 直子, 徐 博卿, 竹中 克, 小室 一成

Koichi KIMURA, Masao DAIMON, Hiroyuki MORITA, Takayuki KAWATA, Tomoko NAKAO, Megumi HIROKAWA, Naoko SAWADA, Boqing XU, Katsu TAKENAKA, Issei KOMURO

1東京大学医科学研究所附属病院先端診療部/循環器内科, 2東京大学医学部附属病院検査部/循環器内科, 3東京大学医学部附属病院循環器内科, 4日本大学板橋病院

1Departments of Advanced Medical Science, IMSUT Hospital, The University of Tokyo, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, The University of Tokyo Hospital, 3Department of Cardiovascular Medicine, The University of Tokyo Hospital, 4Nihon University, Itabashi Hospital

キーワード :

【背景】
筋ジストロフィーは進行性の筋萎縮をきたす遺伝性疾患であるが,心筋症を合併することも多く心不全が最も主要な死因である.また,筋ジストロフィー心筋症は左室緻密化障害を合併する頻度が高く,左室緻密化障害を合併している患者の予後はより悪いことが報告されている.一方で左室緻密化障害を合併した筋ジストロフィー心筋症に対するACE阻害薬やβ遮断薬といった心不全治療薬の有効性は明らかではない.我々は心不全薬の治療前後において心臓超音波検査を経時的に経過観察した症例を経験したので報告する.
【症例】
9歳時にベッカー型筋ジストロフィーと診断を受け近医の小児神経内科にて経過観察を受けていた38歳男性.徐々にBNPの上昇傾向を認めたため,心筋症の精査加療目的に当院紹介となった.受診時NYHAⅡ度,血圧132/80 mmHg,脈拍77 bpm,歩行は遅いが自立しており杖や車椅子は使用していなかったが,採血検査にてBNP 97 pg/ml,CK 3691 U/Lと高値を認めた.心臓超音波検査では左室拡張末期径(LVDd)80mm,左室駆出率(LVEF)17%と拡張型心筋症様の重度の左室拡大と収縮低下を認めており,心尖部を中心に著明な肉柱発達と網状構造を認め左室緻密化障害を合併していた.外来にてカルベジロールとエナラプリルを少量より開始した半年後の心臓超音波検査ではLVDd 72 mm,LVEF 17%と著明な改善は認めなかったが,徐々に治療薬を増量しカルベジロール20 mg,エナラプリル25 mgまで増量した3年後の心臓超音波検査ではLVDd 69 mm,LVEF 25%と,左室縮小傾向および収縮改善傾向を認めた.
【考察】
予後が悪いことで知られている左室緻密化障害を合併した筋ジストロフィー心筋症においても,十分量の心不全治療薬により左室径の縮小や左室収縮の改善が得られ,reverse remodelingを認める例を経験した.筋ジストロフィー患者は一般に血圧が低いことが多いため十分量の内服治療を受けられないことが多いが,本症例は血圧に余裕があり忍容性があったために効果的な用量まで増量することが可能であったと考えられる.
【結語】
筋ジストロフィー患者の治療方針の決定や予後予測に心臓超音波検査が重要な役割をはたし,心機能障害や左室緻密化障害の合併有無について詳細に評価することが重要であり,心合併症を認める場合には十分量の内服治療と超音波検査による経過観察が有用と考えられる.