Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症2

(S477)

技師の情報提供が寄与したMELASの一例

Consultation with sonographer leads to diagnosis of MELAS

長尾 秀紀, 宮本 忠司, 牧 裕香, 藤原 暢子, 入江 まゆ子, 小幡 朋愛, 小野 眞守美, 福原 怜, 佐藤 幸人, 駒井 隆夫

Hidenori NAGAO, Tadashi MIYAMOTO, Yuuka MAKI, Nobuko FUJIWARA, Mayuko IRIE, Tomoe OBATA, Masumi ONO, Rei FUKUHARA, Yukihito SATO, Takao KOMAI

1兵庫県立尼崎総合医療センター検査部, 2兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科

1Department of Clinical laboratory, Hyogo prefectural Amagasaki General Medical Center, 2Department of Cardiology, Hyogo prefectural Amagasaki General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)は,ミトコンドリア病の中では頻度の高い疾患であり,脳卒中様症状を特徴とするものの,合併する臓器症状が多様で,発症年齢の幅が広い.心筋症状(心筋症,伝導障害)は比較的頻度は少ないが,MELAS患者の死因として重要である.我々は,心エコー検査を契機に診断に至ったMELASの一例を経験したので報告する.
【症例】
60歳代女性.
【主訴】
労作時呼吸困難
【既往歴】
38歳より糖尿病,53歳より難聴あり.
【家族歴】
特記すべき事項なし
【現病歴】
20XX年8月16日,18日に38℃台の発熱あり.8月19日食欲不振となりかかりつけ医を受診.胸部レントゲンにて右中肺野に浸潤影を認めたため肺炎疑いにてA病院呼吸器内科を紹介受診.胸部レントゲンにて心陰影の拡大,心エコー検査にてびまん性左室壁運動低下と左室壁肥厚を認め,心筋炎が疑われたため循環器内科に緊急入院となった.心筋トロポニンT陽性は遷延していたが,びまん性壁運動低下は改善傾向にあり本人希望により約1ヶ月で退院した.その後外来にて経過観察中,心不全症状を呈したため,12月9日近医を受診し12月12日当院紹介受診となった.
【心エコー検査所見及び経過】
心エコー検査にてLVDd59/Ds50mm,IVSTd14/PWTd15mmと著明な求心性肥大,左室壁運動はびまん性に低下しLVEF38%,特に中部以降の側壁から下壁の動きが低下していた.既往歴に糖尿病と難聴があることからMELASの可能性について精査を主治医に勧めた.生化学検査,筋生検(心筋,骨格筋),遺伝子検査によりMELASと確定診断された.その後,遺伝子検査により娘もMELASと診断された.
【考察】
心筋肥大を呈する疾患は,肥大型心筋症,Fabry病,アミロイドーシス,急性心筋炎初期などが挙げられるが,頻度は少ないながら,MELASも重要な鑑別診断の一つである.本疾患は,心エコー検査所見以外に,痙攣や脳卒中の既往,糖尿病,難聴を伴うことが特徴であり,鑑別ポイントとして重要である.
【結語】
心エコー検査上,肥大型心筋症様で難聴,糖尿病を伴う場合は,MELASの可能性を考慮する必要がある.