Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症2

(S476)

極度の偏食による低リン血症が一因と考えられた低心機能の一例

Case of the low cardiac function thought that it was caused by hypophosphatemia

河野 裕樹, 坊 直美, 川端 直樹, 岡部 佳孝, 三田村 康仁, 音羽 勘一

Hiroki KOHNO, Naomi BOU, Naoki KAWABATA, Yoshitaka OKABE, Yasuhito MITAMURA, Kanichi OTOWA

1市立敦賀病院医療技術部検査室, 2市立敦賀病院診療部循環器科

1Department of Clinical Laboratory, Municipal Tsuruga Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Municipal Tsuruga Hospital

キーワード :

【はじめに】
精神疾患の中でも,神経性食思不振症を含む摂食障害は死亡率の高いものとしてよく知られており,低栄養,脱水及び甲状腺機能低下を基盤とする様々な身体機能障害を発症し,左心機能低下などの循環器系合併症も引き起こすと言われている.この原因として低リン血症,低カルシウム血症などの電解質異常が存在すると言われている.
今回,精神疾患はないもの,極度の偏食により低リン血症が引き起こされ,これが一因と考えられた低心機能の一例を経験した為報告する.
【症例】
55歳女性 
【既往歴】
10歳時に腹膜炎手術
【現病歴】
平成28年5月中旬より食欲不振,体重減少を認めたことより近医を受診し,整腸剤等を処方され経過観察となる.その後,症状は改善傾向であったが,同年6月初旬,全身倦怠感及びふらつき,下腿浮腫を自覚するようになったことから再度同医院を受診したが,その際の採血結果にて肝機能異常を認めたことから当院に紹介となった.
【来院時検査結果】
身体所見:身長157cm,体重35kg,BMI14.2kg/m2,血圧110/72mmHg,脈拍86bpm,意識レベル正常,呼吸音正常,下腿浮腫,労作時息切れあり.主なラボデータ:貧血無し,炎症反応(-)AST384U/L,ALT279U/L,ALP360U/L,γ-GT116U/L,LDH1096U/L,CPK8599U/L,CK-MB578ng/mL,CK-MM9062ng/mL,BNP1098pg/mL,TP6.0g/dL,ALB3,7g/dL,血中微量元素(亜鉛・銅・セレン・マンガン)は正常値,尿中タンパク2+,尿潜血2+,尿糖3+.単純CT:うっ血肝疑い,心嚢水貯留,心拡大.心電図検査:四肢・胸部ともに低電位差,V1V2誘導のpoor R.
【心エコー図検査】
左室びまん性に壁運動は低下し,LVEFは29%と高度低下していた.左室拡張・収縮末期径は38/33mmと左室拡大は見られず,心全周性に心嚢水が貯留していた.心内腔の虚脱所見は認められなかった.
【経過】
虚血性心疾患及び心筋症除外目的で,心臓カテーテル検査を施行するも冠動脈は正常,心筋生検も実施したが病理診断も特記事項はなかった.また,心膜心筋炎を考慮し,除外目的のウイルススクリーニングを施行するもこちらも陰性であった.ここで,アナムネにて極度の偏食があったことから,これが原因による横紋筋融解症・心筋障害を疑い血清リン及び血清カルシウムを測定した.結果,IP1.8mg/dL,Ca8.3mEq/Lと低値であったことから,一連の現症は血中リン低下が関与していると判断しリン補正を行ったところ,心機能・症状ともに改善し7月初旬に退院となった.(退院時IP3.0mg/dL,LVEF60%)
【考察】
血中のリンは生体内で種々の重要な役割を果たしており,血清リンが2.5mg/dL未満になった状態を低リン血症という.リンは生体内で種々の重要な役割を果たしているが,特によく知られているのは,人体のエネルギーとなるATP(adenosine triphosphate)を産生するためにはリンが必要であるということである.低リン血症の症状は様々であるが,一般的なものに筋肉の麻痺が挙げられ,これが心筋の場合,心収縮性の低下,血圧低下,心拍出量の低下等が起こり,心不全の原因になると言われている.本症においては,極度偏食により低リン血症に陥り,その結果低心機能状態になったと考えられる.
【結語】
今回,極度の偏食による低リン血症が一因と考えた低心機能の一例を経験した.心エコー図検査による心機能評価を行うことで,血清リン値の改善により,心収縮能が改善していく経過を確認することができた.また,心収縮能低下の原因の一つに摂食障害や偏食が関係していることも念頭に置き,患者の生活背景も考慮し検査にあたることが必要と考えられた.