Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 弁膜症

(S474)

心臓超音波検査にて偶然診断し得た大動脈4尖弁の小児2症例

Quadricuspid aortic valves associated with no aortic regurgitation in two child cases diagnosed by chance Ultrasonography

岡本 吉生, 住友 裕美, 小林 光郎, 森田 啓督, 佐藤 潤, 伊藤 滋, 藤本 正和, 谷本 泰三

Yoshio OKAMOTO, Yumi SUMITOMO, Miturou KOBAYASHI, Keitoku MORITA, Jyunn SATO, Shigeru ITOU, Masakazu FUJIMOTO, Taizou TANIMOTO

1香川県立中央病院小児科, 2香川県立中央病院生理検査室

1Pediatirics, Kagawa Prefectural Central Hospital, 2Physiological Laboratory, Kagawa Prefectural Central Hospital

キーワード :

【背景】
大動脈4尖弁は非常に稀な疾患であり,その頻度は剖検例で0.008ー0.033%,心臓超音波検査で0.013ー0.033%とも報告されている.大動脈4尖弁の弁機能異常として大動脈弁逆流が半数近く認められるとされ,さらには冠動脈病変が30%,また大動脈弁輪拡大,肥大型心筋症などその他の心奇形も呈するともある報告されている.また外科的手術を要する例も決して少なくないとされている.しかし大動脈4尖弁は先天性疾患であるにかかわらず,症状が出現するのは中年以降が多いといわれており小児期に発見されることは稀とされる.今回我々はスクリーニング検査の一環として心臓超音波検査を施行した際に,偶然に大動脈4尖弁を診断し得た小児例を経験したので報告する.
【症例】
症例1: 6歳11ヶ月の男児.不完全右脚ブロックを学校健診にて指摘され,二次検査における心臓超音波検査にて大動脈4尖弁が診断された.大動脈弁逆流(-)冠動脈病変(-)その他の心奇形などは認めなかった.
【症例2】
8歳11ヶ月の女児.胸痛を主訴に病院を受診,精査の心臓超音波検査にて大動脈4尖弁が診断された.大動脈弁逆流(-)冠動脈病変(-),左室の心機能低下はなく,左室心内膜の増生が軽度存在していたが,それ以外には心奇形など認めなかった.
【考察/結語】
早期に大動脈4尖弁を見つけることは,将来的な弁機能異常の出現の予測やその他の疾患の発見の契機になったり,場合によっては治療的早期介入なども可能となるメリットがあると考えられる.有症状の場合や大動脈弁逆流などを認める場合には,該当する弁の形態異常についてなどしっかりと観察することは心臓超音波検査の基本であるが,症状や大動脈弁逆流など存在しない,いわゆるスクリーニング検査の場合でも,常に発見する或いは精査する意識をもつことにより弁の形態異常をみつけることが可能となると考えられる.またさらに小児期においては,大動脈4尖弁は無症状の場合が多く,そもそも心臓超音波検査をうける機会も成人ほど多くはないかもしれないが,石灰化などが存在するような成人期と違い,体格の小さい小児期の場合には,弁形態が成人と比較して容易に観察しやすく,少し意識するのみで大動脈4尖弁などが発見できる確率はさらに上がることも予想される.今後は過去の報告より大動脈4尖弁の頻度が多くなる可能性は十分に考えられる.成人のみならずむしろ小児において心臓超音波検査する際にしっかりと弁形態もチェックするという意識をもつことが重要かもしれない.近年の超音波検査機器の多機能等には目を見張るものがある中,今回の大動脈4尖弁の症例を通して,B-modeでしっかりと心臓などの構造物などをチェックすることも心臓超音波検査の基本であることを改めて認識させられた.