Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 弁膜症

(S473)

二尖弁様に観察された大動脈弁位生体弁狭窄症を発症した人工透析患者の一例

A Case of Hemodialysis Patient with Bioprosthetic Aortic Valve Stenosis observed like Bicuspid Aortic Valve

有吉 亨, 和田 靖明, 奥田 真一, 小室 あゆみ, 山崎 隆弘, 美甘 章仁, 濱野 公一, 田中 伸明, 矢野 雅文

Toru ARIYOSHI, Yasuaki WADA, Shinichi OKUDA, Ayumi OMURO, Takahiro YAMASAKI, Akihito MIKAMO, Kimikazu HAMANO, Nobuaki TANAKA, Masafumi YANO

1山口大学医学部附属病院超音波センター, 2山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学, 3山口大学大学院医学系研究科器官病態外科学, 4山口大学大学院医学系研究科病態検査学

1Ultrasound Examination Center, Yamaguchi University Hospital, 2Department of Medicine and Clinical Science, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, 3Department of Surgery and Clinical Science, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, 4Department of Cnilinical Laboratory Science, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

症例は当院で重症大動脈弁狭窄症に対し生体弁による大動脈弁置換術を施行した82歳女性.術後2年目に外来で行った心エコー図検査(TTE)で異常所見はなかった.それ以降,他院での経過観察となり,徐々に腎機能が悪化し手術より5年後に維持透析(週3回)が開始された.透析19か月目のTTEで透析開始8か月目にはみられなかった大動脈弁通過血流速度の亢進が指摘され,人工弁機能不全疑いにて当院へ紹介となった.来院時身体所見では胸骨右縁第2肋間に最強点を有するLevineⅢ/Ⅵの駆出性収縮期雑音を聴取し,心電図は術前より見られた完全右脚ブロックに加え胸部誘導で高電位を呈していた.TTEでは術後2年目に当院外来で施行した検査時に指摘のない全周性左室壁肥厚を認めた.また,大動脈弁位置換弁にパンヌスや血栓を疑う異常構造物や,音響陰影を伴う弁尖の顕著な石灰化像はみられなかったが,弁尖はいずれもエコー輝度が軽度上昇し,左冠尖位と無冠尖位の弁尖は無可動である二尖弁様形態を呈していた(図上段右).大動脈弁位置換弁通過血流速度は4.1m/s(Mean PG=37mmHg)と亢進し(図下段左),Doppler velocity index低値(=0.23)とAcceleration time延長(=112ms)がみられ,重度大動脈弁位置換弁狭窄症に矛盾しない所見であった.透析導入後に発症した人工弁機能不全と診断され再手術が施行された.術中所見ではTTE所見と一致した人工弁の右冠尖位弁尖を除く2尖に硬化・可動制限を認め(図下段右),機械弁による大動脈弁再置換術が施行された.摘出した人工弁の病理所見では石灰化が可動制限の原因と考えられた.
これまで,透析患者では生体弁の急速な石灰化を想定して機械弁による弁置換術が推奨されていた.しかし,長期生存率に差はなく生体弁において出血や塞栓症のリスクが低いといった報告もあり,最近のACC/AHAガイドラインでは抗凝固療法や再弁置換術の必要性とリスクを考慮した置換弁の選択が推奨されている.本邦の透析患者においては欧米と比較して良好な生命予後を考慮した置換弁の選択が必要であるが,生体弁を選択した際は弁尖硬化や弁狭窄が急速に進行する可能性を念頭に置いて注意深く心エコー図検査を行う必要があると考えられた.