Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症1

(S472)

心房のびまん性壁肥厚を認めたことを契機に心筋炎を強く疑った一例

A case of suspected myocarditis with hypertrophy of the atrial wall

山本 紗耶佳, 中川 美波, 田中 和子, 廣田 由美, 児玉 健二, 髙橋 宏明, 道智 賢市, 上野 義記

Sayaka YAMAMOTO, Minami NAKAGAWA, Kazuko TANAKA, Yumi HIROTA, Kenji KODAMA, Hiroaki TAKAHASHI, Kenichi DOCHI, Yoshiki UENO

1長浜赤十字病院検査部, 2長浜赤十字病院循環器内科

1Department of Laboratory Medicine, Nagahama red cross Hospital, 2Department of Cardiology, Nagahama red cross Hospital

キーワード :

【症例】
66歳女性.数日前より倦怠感,下腿と顔面浮腫及び動悸が出現.近医にて心胸比増大,胸水貯留及び頻脈性心房細動を指摘され,精査加療目的で紹介入院となった.来院時血液検査にてBNPの軽度上昇と肝機能低下を,心電図では心房細動,四肢低電位,T波平低化及びV1~3のR波減高及び胸部CTにて心嚢液と両側胸水貯留が認められた.経胸壁心臓超音波検査では左室収縮能は保たれていたが全周性に心嚢液貯留が認められた.原因検索目的にて胸部造影CT施行したところ,左房にびまん性壁肥厚が疑われた.びまん性壁肥厚の確認のために再度経胸壁心臓超音波検査及び経食道心臓超音波検査を施行したところ,CT所見同様に左房にびまん性壁肥厚が認められた.壁肥厚の原因検索の為にGaシンチグラフィ及び心臓MRIを施行した.Gaシンチグラフィで両心房に強い異常集積を認め,心臓MRIでは両心房に炎症性変化を伴う壁肥厚が認められ,炎症性変化による壁肥厚が疑われた.精査のための心房生検は施行困難な為,右室心筋生検を施行したところ炎症細胞の浸潤が認められ心筋炎と診断した.また心嚢穿刺にて,心嚢液は炎症性であった.心嚢穿刺によるドレナージ後では心嚢液の増加はなく,胸水も減少したため外来にて経過観察となった.退院2か月後の経胸壁心臓超音波検査では左房の壁肥厚は消失し,退院4カ月後にGaシンチグラフィを再度施行したところ,心房の異常集積は消失していた.現在,慢性心房細動にて外来通院している.
【まとめ】
今回心嚢液貯留と心房にびまん性壁肥厚を認めたことを契機に心筋炎を強く疑った症例を経験した.また,心筋炎の心臓超音波検査所見では心室心筋に関するものが多く,心房に関しては不明な部分も多い.今回心筋炎症例において,左房のびまん性壁肥厚が確認できたので報告する.