Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症1

(S471)

LVADを離脱しえた周産期心筋症の一例

Successful outcome in a patient with peripartum cardiomyopathy requiring LVAD

渡部 久美子, 新保 麻衣, 佐藤 和奏, 飯野 貴子, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Kumiko WATANABE, Mai SHINBO, Wakana SATO, Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
32歳,女性
【現病歴】
平成27年7月第2子分娩3週間後に呼吸困難を訴え,A病院を受診.胸部レントゲン写真で心拡大と肺うっ血を認め,うっ血性心不全の診断で当院転院となった.心臓超音波検査で高度僧帽弁逆流,びまん性左室収縮障害(EF 15%)を認め,重症周産期心筋症と診断した.収縮期血圧は110 mmHg台であったが,心拍数180 bpm台の高度の洞性頻脈の状態であり,人工呼吸器管理としてIABP補助下にカテコラミンでの治療を開始した.第2病日,繰り返す持続性心室頻拍を契機にショック状態に移行し,PCPSを導入した.しかし,心機能の改善はなく多臓器障害が進行し,第8病日に体外設置型LVADを装着し,同時に僧帽弁形成術を施行した.LVAD装着後は速やかにカテコラミンを離脱し,抗プロラクチン療法やビソプロロール・イミダプリル内服加療を行った.その後,術後1週間目より心臓リハビリテーションを開始,ビソプロロールを10 mg/日まで漸増した.術後1か月では自己大動脈弁の開放は数回に1回であったが,3か月後には全拍動で開放するようになり,EFは38%まで改善した.さらに半年後にはBerlin拡大基準を満たしたため,LVAD離脱は可能と判断した.その後,離脱に向けてドブタミン負荷試験を施行し,off試験を経て第169病日にLVADを離脱した.術後リハビリを継続し,第203病日に独歩退院を果たした.退院後,さらに心機能は改善し,LVAD離脱後1年でEFは55%まで回復している.
【考察】
周産期心筋症は,2万出生に1人程度の罹患率であると言われている.予後については,報告によってばらつきがあるが,4~15%は死亡すると記した文献もある.本症例のように早期から集学的治療を行い,LVAD離脱に成功した周産期心筋症症例は稀である.心臓超音波検査は,診断,治療効果判定のみならず,LVAD離脱に際してもその所見が有用であったため,ここに報告する.