Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
生体作用・ファントム

(S468)

Bモード及びドプラモードボリュームの3次元血管構造の比較検証のためのファントム製作

Production of 3D blood vessel phantom for comparison between B-mode and Doppler-mode volumes

木村 允俊, 山下 智己, 望月 剛, 桝田 晃司, 絵野沢 伸

Mitsutoshi KIMURA, Tomoki YAMASHITA, Takashi MOCHIZUKI, Kohji MASUDA, Shin ENOSAWA

1東京農工大学大学院生物システム応用科学府, 2国立成育医療研究センター臨床研究センター

1Graduate School of Bio-Applications and Systems Engineering, Tokyo Univ. of Agriculture and Technology, 2Center for Clinical Sciences, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【はじめに】
我々は,微小気泡やカテーテルを超音波により血管内にて制御し,腫瘍などの目的部位に到達させる治療システムの研究を行っている.このためには事前に血管網の3次元構造の把握が必要であり,これまでドプラモード(以下,Dモード)ボリュームの血管網の解析[1]と,Bモードで得られた血管網との融合[2]により,3次元血管構造の再構築を行ってきた.一般にDモードは方位方向,Bモードは距離方向に走行する血管検出能が劣るため,両者の融合には効果が認められたが,呼吸等による位置ずれの問題があり,生体の血管を扱う限りは精度検証に限界があった.また現存のファントムでは,両モードに対応した3次元血管構造を検証できるものが入手できない.以上の経緯より本研究では,同一座標空間で同時に両モードの撮像に対応し,任意の3次元血管構造が可能なファントム製作方法の確立を目的とする.
【方法】
血管壁材質として天然ゴム,シリコーンとウレタンの3種類,また周辺組織材質としてグラファイトを配合したPEGMAまたは寒天を候補として選出し,製作可能な血管径及び壁厚の限界と,両モードでの描出能を検証した.血管壁は,製作精度100 mの3Dプリンタを用いてポリ乳酸製の雌型を製作し,脱泡した壁材質を流し込んで硬化させた.これを100×140×40 mm^3の容器内に固定し,周辺材質を流し込んで硬化させ,本実験のファントムとした.
超音波診断装置(iU22,Philips)を用いて,上記ファントムにドプラ擬似血液材(Model 707)を一定速度で流し,両モードボリュームを同時に取得し,血管径及び壁厚の変化に対する再構築された血管構造の再現性を比較検証した.
【結果】
硬度15のウレタン(エクシール)により壁厚1.0 mm,内径5.0 mmのY字分岐構造を有する血管壁を成形し,重量濃度0.01%のグラファイトを配合した寒天を周辺材質として製作したファントムに上記ドプラ液を流速90 mm/sで流し,得られたBモード及びDモードボリュームと,実際の血管壁の外観を図に示す.ここで超音波診断装置の設定は,Bモードゲイン20%,Dモードゲイン30%とした.これらのパラメータでは,両ボリュームでの分岐構造の描出が明瞭であった.この手法から同様の分岐構造を容器内で連結させることにより,任意の3次元構造を有する血管網ファントムの製作が可能となった.
[1]S.Onogi, et al. Adv. Biomed. Eng., Vol.4(2015).
[2]山下他,第55回日本生体医工学会大会論文集(2016)