Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
生体作用・ファントム

(S467)

長期安定性に優れた新規生体擬似材料

A new tissue-mimicking material having excellent long-term stability for ultrasonic phantoms

佐藤 一石, 近藤 敏郎, 吉田 知司, 安川 和宏

Kazuishi SATO, Toshio KONDO, Tomoji YOSHIDA, Kazuhiro YASUKAWA

1徳島文理大学理工学部ナノ物質工学科, 2徳島文理大学保健福祉学部臨床工学科, 3タキロン株式会社基礎技術部

1Nanomaterial and Bioengineering, Tokushima Bunri University, 2Clinical Engineering, Tokushima Bunri University, 3Basic Technology, Takiron Co.,Ltd.

キーワード :

【背景と目的】
超音波診断装置の性能を評価するためにファントムが広く用いられている.この評価法は,簡単な操作で的確な評価ができるのが特徴であるが,ファントムを構成している生体疑似物質の安定性について問題があった.生体疑似物質の物性(音速,密度,減衰特性,後方散乱係数)を所定の値に設定でき且つそれらが長期間にわたり安定していることが必要である.このような材料を実用化するため,簡単に再現性良く作製することを試みた.
【方法】
ファントムを構成する生体疑似物質の物性値はIEC規格[1]で規定されている.物性が長期にわたり安定しているSegmented Polyurethane Gel(SPUG)[2]にPoly(methyl methacrylate)(PMMA)粉体を分散させて既定の物性値の生体疑似物質を作成することにした.今回は,減衰特性を容易に調整できるようにするため,1種類の粉体で且つ分散量を少なくすることを試みた.PMMAの音速と密度が決まっているので,SPUGの音速を任意の数値に設定できることが必須となる.この生体疑似物質の音速と密度は,Urick理論[3]から与えられる.これらの知見を基に望まれるSPUGの音速と粉体の分散量を検討した.ここでSPUGの音速を任意の値に調整できることが要求される.1-ethyl-3-methylimidazolium thiocyanate[emim][SCN]の音速はTetraethylene glycol dimethyl ether(TeD)の音速よりかなり低く,密度はほぼ同等である.このような[emim][SCN]の物性を鑑みてSPUGに含有するゲル膨張媒として従来のTeDのみのゲル膨張媒のSPUGより音速の低いSPUGの作成を試みた.TeDと[emim][SCN]の混合溶液の混合比とSPUGの密度と音速の関係は実験により求めた.
【結果】
SPUGに含有するゲル膨張媒としてTeDと[emim][SCN]の混合溶液を用いることにより,SPUGの有する物性の安定性を損なうことなくその密度と音速を望ましい値に設定できることが判明した.作成したSPUGの物性の安定性は,熱重量測定(TG)により評価した.TeDと[emim][SCN]の混合溶液で今回作成したSPUGの加熱による劣化は,従来のSPUGより寧ろ少なくなっていた.
【結論】
SPUGに含有するゲル膨張媒としてTeDと[emim][SCN]の混合溶液を用いたSPUGにPMMAを粉体させることにより,IEC規格[1]で規定され生体疑似物質が実現できた.
【参考文献】
[1]IEC: IEC61685. Ultrasonic-Flow measurement systems Flow test object
(International Electrotechnical Commisision, Geneva, 2001)
[2]Yoshida, Y. Tanaka, T. Kondo, K. Yasukawa, N. Miyamoto, M. Taniguchi, and Y. Shikinami,“Tissue-mimicking Materials Using Segmented Polyurethane Gel and Their Acoustic Prioperties”,Jpn. Appl. Phys. Vol.51,pp07GF17-1-3,2012
[3]R. J. Urick: J. Appl. Phys. 18,(1947)983