Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
生体作用・ファントム

(S466)

超音波照射によるDNA分子の二重鎖切断

Double-strand breaks of DNA molecules by ultrasound exposure

石原 和也, 山下 悠介, 吉田 憲司, 秋山 いわき, 剣持 貴弘, 吉川 裕子, 吉川 研一, 渡辺 好章

Kazuya ISHIHARA, Yuusuke YAMASHITA, Kenji YOSHIDA, Iwaki AKIYAMA, Takahiro KENMOTI, Yuuko YOSHIKAWA, Kenichi YOSHIKAWA, Yoshiaki WATANABE

1同志社大学生命医科学部, 2立命館大学総合科学技術研究機構, 3同志社大学超音波医科学研究センター, 4千葉大学フロンティア医工学センター

1Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University, 2National Institute of Science and Technology, Ritsumeikan University, 3Medical Ultrasound Research Center, Doshisha University, 4Center for Frontier Medical Engeneering, Chiba University

キーワード :

【目的】
本研究は,パルス繰り返し周期(PRT: Pulse Repetition Time)とパルス持続時間(PD: Pulse Duration)を変化させ,DNA二重鎖切断発生する音圧閾値を調査することを目的としている.
【対象と方法】
使用したDNAはT4ファージDNA(166 kbp,57 m)である.DNAを9 L,緩衝溶液のTris-HClを45 L,脱気した水を846 L添加し濃度が0.1 MとなるようにDNA溶液を作成した.振動子はPZT凹面振動子(共振周波数1.0 MHz,口径46 mm,ビーム幅2.0 mm,焦点距離46 mm)を使用した.照射条件は中心周波数を1 MHzとし,PRTとPDを変化させた.また,それぞれの条件において照射する超音波の総エネルギーが等しくなるように照射時間を調整した.超音波照射後のDNA溶液に蛍光色素YOYO1を加え蛍光顕微鏡でDNA分子を観測し,その長さを測定した.二重鎖切頻度はn =L0-L/Lを用いて求めた.L0は超音波照射を行っていないDNA分子平均長,Lは超音波照射後のDNA分子平均長である.
【結果と考察】
観測したDNA二重鎖切断の結果を図に示す.同図から,各照射条件において,低周波超音波における結果と同様の結果が確認された[1].結果からPDが増加するに伴いMI値1.9以下においてDNAの二重鎖切断が発生することを確認した.これは連続的に超音波が照射されることでキャビテーションの影響が増加したためだと考えている.このことから,超音波を連続的に照射するとMI値1.9以下においても生体に影響を与えることが推察される.また,PRTが長くなるに伴いDNA二重鎖切断が発生する音圧閾値が上昇していることを確認した.PRTが短い場合,いったん発生した気泡が非照射時間中において完全に消滅せず残存し,次のパルス照射期間においてキャビテーションが発生しやすくなると推察される.この影響が音圧閾値の低下となって観測されたと考えている.
【結論】
超音波パルスのPDとPRTを変化させることでDNA二重鎖切断が発生する音圧閾値に変化が生じた.また,PDが増加するとMI≦1.9においてもDNA二重鎖切断が発生することを確認した.今後は他の周波数でも同様の検討を行う予定である.
【参考文献】
[1]K. Yoshida et al, Appl. Phys. Lett., vol 103,no.6,063705,2013.