Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
生体作用・ファントム

(S466)

マウスST2骨髄間質細胞の細胞増殖と骨芽細胞分化に対する低出力パルス超音波の効果

Effects of low-intensity pulsed ultrasound on cell growth and osteoblastic differentiation of mouse ST2 bone marrow stromal cells

田渕 圭章, 長谷川 英之, 藤森 沙月, 鈴木 信雄, 竹内 真一, 椎葉 倫久, 近藤 隆, 望月 剛

Yoshiaki TABUCHI, Hideyuki HASEGAWA, Satsuki FUJIMORI, Nobuo SUZUKI, Shin-Ichi TAKEUCHI, Michihisa SHIIBA, Takashi KONDO, Takashi MOCHIZUKI

1富山大学研究推進機構, 2MU研究所, 3富山大学大学院理工学研究部, 4金沢大学環日本海域環境研究センター, 5桐蔭横浜大学大学院工学研究科, 6日本医療科学大学保健医療学部, 7富山大学大学院医学薬学研究部

1Life Science Research Center, University of Toyama, 2Research Laboratory, Medical Ultrasound Laboratory, 3Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama, 4Institute of Nature and Environmental Technology, Kanazawa University, 5Graduate School of Biomedical Engineering, Toin University of Yokohama, 6Faculty of Health Sciences, Nihon Institute of Medical Science, 7Graduate School of Medicine and Pharmaceutical Sciences, University of Toyama

キーワード :

【目的】
超音波は,医療現場において診断や治療に必須の技術である.その中で,低出力パルス超音波(LIPUS)は,骨折治療に有効利用されている.また,in vitroの細胞を用いた実験において,LIPUSの骨芽細胞分化誘導作用や増殖促進作用など数多くの報告があるが,LIPUSが細胞にどの様に影響を与えるのか,その詳細は未だに不明な点が多い.今回我々は,マウス骨髄間質細胞ST2を用いて,細胞増殖と骨芽細胞分化に対するLIPUSの効果を検討した.
【方法】
マウス骨髄間質細胞ST2(理研BRC)を10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁し90 mmシャーレ(日本ジェネティクス)に蒔き,CO2インキュベータ内で培養した(37℃).超音波発生装置(Sound Cell Incubator Drive SCI-D100,MU研究所)に接続した超音波照射器(Sound Cell Incubator SCI-p1,MU研究所)をCO2インキュベータ内に水平に設置し,脱気水を挟んでその上にシャーレを置き,シャーレの下面から超音波を20分間照射した(超音波周波数1.0 MHz,DF: 20%,パルス繰り返し周波数:1 kHz,送信電圧:1-5 V).骨芽細胞の分化の指標であるAlp(alkaline phosphatase)活性は,p-nitrophenyl phosphateを基質として測定した.ERK(extracellular signal-regulated kinase 1/2)のリン酸化レベルは,リン酸化ERKと総ERKを特異的に認識する抗体を用いて,ウエスタンブロット法で行った.AlpとOpg(osteoprotegerin,骨芽細胞の分化の指標)の遺伝子発現レベルは,リアルタイム定量的PCR法で測定した.
【結果】
ハイドロフォンを用いた測定により,送信電圧1,2,3,4と5 Vの時,音圧は各々13.9,17.0,21.6,27.7と33.4 kPaであった.また,これらの値からLIPUSの強度ISPTAは各々64.1,95.8,155.2,256.6と371.6 J/m2と算出された.ST2細胞へのLIPUSの20分間照射30分後,ERKのリン酸化レベルはLIPUS強度に依存して抑制された.細胞に1日1回20分間4日間連続してLIPUSを照射し,その24時間後に細胞数とALP活性を測定した.LIPUS(送信電圧3 V)は細胞数には影響を与えなかったが,ALP活性を有意に抑制した.同条件下,LIPUS照射の6時間後,Alp遺伝子の発現レベルは抑制傾向を示し,Opgのレベルは有意に抑制された.
【結論】
マウス骨髄間質細胞ST2において,LIPUSが細胞増殖に影響を与えず,骨芽細胞への分化を抑制する効果があることが示された.この作用にERKのリン酸化レベル低下が関与している可能性がある.現在,Runx2など他の骨芽細胞の分化のマーカー遺伝子の発現に対するLIPUSの効果を検討している.