Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
超音波治療・援用

(S464)

気泡援用超音波加熱治療における超音波散乱信号変化による治療モニタリング

Monitoring of backscatter change of therapeutic ultrasound in cavitation-enhanced ultrasound thermal treatment

吉澤 晋, 富安 謙太郎, 岩﨑 亮祐, 高木 亮, 梅村 晋一郎

Shin YOSHIZAWA, Kentaro TOMIYASU, Ryosuke IWASAKI, Ryo TAKAGI, Shin-Ichiro UMEMURA

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Department of Communications Engineering, Tohoku University, 2Department of Bioengineering Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
強力集束超音波(HIFU: high-intensity focused ultrasound)を用いた軟部組織の加熱凝固治療では,気泡存在下で超音波加熱が増強されることが知られている.他方,超音波ガイドによる超音波加熱治療では,超音波イメージングにおけるRF信号の微小変化を用いた治療モニタリング手法が研究・開発されている.しかしながら,気泡からの超音波エコーは極めてランダム性が高いため,気泡存在下ではそのようなモニタリング手法を適用することは困難である.そこで,本研究では気泡からのHIFU散乱信号を用いた治療モニタリング手法の開発を目的とする.
【方法】
キャビテーション気泡を広範囲に発生させるため,直径120 mm,焦点距離120 mm,128素子からなるHIFU用アレイトランスデューサを用い,焦点の電子走査を行った.走査点は,HIFU伝播軸垂直平面内の1辺3 mmの正六角形頂点の6点とした.周波数は1 MHzとし,気泡を発生させるための全音響出力1800 Wの強力かつ短時間の気泡生成用パルスを焦点走査しながら0.67 ms照射した.続いて気泡援用加熱を目的として,6点の焦点を含む円環状の焦点領域を形成した90 Wの連続波を50 ms照射した.このシーケンスを繰り返し周波数20 Hzで10 s照射した.シーケンスの繰り返しの間には2 msのHIFU休止時間を設け,この間にセクタ型超音波イメージングプローブによる高速超音波イメージングを行った.送信周波数は1.88 MHzとし,パルスインバージョン法を用いて気泡強調画像(以下PI画像)を取得した.さらに,HIFU照射中にも同じプローブを用いてHIFU散乱信号を受動的に取得した.このとき,受信ビームフォーミングはHIFUの幾何焦点に固定し,得られた波形の周波数成分の時間変化を調べた.HIFU照射対象は36度の脱気水中に設置した,脱気された鶏肉とした.
【結果・考察】
HIFU焦点からの散乱信号は商社開始後から数秒程度で著しく上昇することがわかった.周波素成分に着目すると,HIFUの中心周波数である1 MHz成分よりも高調波成分である2 MHzの成分の変化がより顕著であり,HIFU照射開始直後と比較して数倍程度に上昇することが多かった.このとき,HIFU休止時間中に取得したPI画像では,HIFU焦点に観測されていた高輝度領域がHIFUトランスデューサ側に拡大する現象が観測された.これらの結果と,気泡からのHIFUの反射波が更なる気泡生成に作用する,温度上昇とともにキャビテーション生成閾値が低下する,という先行研究結果などから,HIFU焦点領域における著しい温度上昇に起因する現象であると考えられた.すなわち,HIFU焦点領域の温度上昇によって焦点領域の気泡の体積率が増加し,気泡からの反射波の影響によってトンラスデューサ側に新たなキャビテーション気泡が生成し,新たに生成された気泡によってHIFU散乱信号の高調波成分が著しく増加したと考えられた.
発表では,HIFU散乱信号の高調波成分の著しい増加をリアルタイムに検出し,それによってHIFU照射時間を制御した場合の加熱凝固領域サイズについても議論する予定である.