Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
超音波治療・援用

(S463)

非侵襲脳疾患治療におけるシミュレーションを用いた集束超音波照射システムの開発

Non-invasive therapy for brain disease using tFUS system assisted by numerical simulation

小林 洋平, 東 隆, 清水 和弥, 山村 直人, 大屋 知徹, 小泉 昌司, 鈴木 亮, 丸山 一雄, 関 和彦, 高木 周

Yohei KOBAYASHI, Takashi AZUMA, Kazuya SHIMIZU, Naoto YAMAMURA, Tomomichi OYA, Masashi KOIZUMI, Ryo SUZUKI, Kazuo MARUYAMA, Kazuhiko SEKI, Shu TAKAGI

1東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻, 2東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター, 3東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻, 4国立精神神経医療研究センター神経研究所モデル動物開発研究部, 5帝京大学薬学部薬物送達学研究室

1Department of Bioengineering, The university of Tokyo, 2Center for Disease Biology and Integrative Medicine, The university of Tokyo, 3Department of Mechanical Engineering, The university of Tokyo, 4Department of neurophysiology, National Center of Neurology and Psychiatry, 5Facluty of pharma science, Department of Medical and Pharmaceutical Sceinces, Teikyo university

キーワード :

【目的】
本研究は革新的な脳疾患治療法の開発にむけて,集束超音波とマイクロバブルを用いたBBB opening,および脳梗塞後の麻痺に対してリハビリ効果のある赤核の刺激に注目し,より人間に近いマカクザルで,その効果を確かめることを目的としている.東京大学・国立精神神経医療研究センター・帝京大学の3機関が連携し,それぞれ超音波照射系,サルを用いた実験系の構築,実験に用いるマイクロバブルの開発を分担して進めている.超音波照射系を構築するにあたり最大の課題は,主に頭蓋骨の影響を受けて超音波ビームが歪み,脳内での集束位置が予測できないことである.本研究では,頭蓋骨内の超音波伝播を対象動物のCT画像を用いてシミュレーションし,位相制御法によって頭蓋骨内での集束点を制御する手法の開発を行う.
【方法】
位相制御法は,複数のピエゾ素子で構成された図1のような多素子トランスデューサを使用し,各素子から放出される超音波の位相をずらし,超音波を目標位置に集束させる技術である.ここで各素子の位相遅れは,シミュレーションを用いて,目標点に仮想音源を設置し,各素子で頭蓋骨を介して伝播した超音波の伝播時間のずれ・相関から決定する.シミュレーションでは頭蓋骨を介した超音波の伝播を,対象動物のCT画像から頭蓋骨をモデル化し,連続体の基礎方程式を流体と弾性体の混成体として解析している.複雑な生体構造の細かい再現には膨大な計算を要するため,媒質を骨と水の2媒質とし,CT画像の輝度値を骨の体積分率に変換することで各ボクセルの密度・音速を算出し,超音波の伝播を計算する.
【結果】
図2のような配置で1MHz,口径・半径が30mm,64chの多素子トランスデューサを用い,実際のマカクサルのCTデータを使用してシミュレーションを行った.図3は,超音波の伝播をシミュレーションした結果で,焦点付近の圧力分布を表している.(a)は水単媒質,(b)・(c)は骨を介した場合で,それぞれ制御無し,位相制御をした場合の結果を表している.原点は幾何焦点である.これより,制御なしの場合に比べて制御した場合,目標点への集束度合の向上が確認できる.
【結論】
シミュレーションより,64chの多素子トランスデューサを用いた位相制御によって,集束点制御が可能であることが示唆された.今後実測との比較を通して,モデル化手法やパラメータの検討を行えば,サルの脳内で集束点の制御が可能であると考えられる.