Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
マイクロバブル・ナノバブル

(S460)

超音波造影剤と標的分子の親和性評価システムの開発

System for evaluating affinity between ultrasound contrast agents and target molecule

吉田 憲司, 横井 康弘, 大月 裕太, 渡辺 好章

Kenji YOSHIDA, Yasuhiro YOKOI, Yuta OTSUKI, Yoshiaki WATANABE

1千葉大学フロンティア医工学センター, 2同志社大学理工学部, 3同志社大学生命医科学部

1Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 2Faculty of Science and Engineering, Doshisha University, 3Facutly of Life and Medical Sciences, Doshisha University

キーワード :

【目的】
特定の分子を特異的に認識するように設計したマイクロバブル(TMB : Targeted micro bubble)の超音波分子イメージング用造影剤としての応用が期待されている.すでに,基礎研究レベルでラットの腫瘍や炎症組織を選択的に造影した報告がなされている.マイクロバブルの標的分子への吸着特性を事前に評価することができれば,その基礎データは実用での戦略をたてる上で非常に重要となることが期待される.実験条件の制御が難しいin-vivo実験では詳細な評価が難しいため,本研究ではTMBと標的分子の親和性を計測可能なバイオセンサシステムの提案および構築を目的としている.
【対象】
分子標的マイクロバブルとしてビオチンを修飾したビオチン化マイクロバブル,標的分子としてビオチンと特異的に反応するアビジンを用い,両者の親和性を反応速度およびバブル吸着量を指標に評価した.アビジン・ビオチン結合は分子イメージングの検出対象となる生化学反応ではないが,解離定数が10-15mol/Lと非常に安定した結合である.相互作用を高感度で評価できることが期待できるため,提案システムの検証を第一の目的とした本検討には適した試料であるといえる.
【方法】
評価システムには水晶振動子システム(Quartz Crystal Microbalance: QCM)を使用した.QCMを用いると,その表面に吸着した物質の質量や粘弾性をQCMの共振特性の変化として評価することが可能である.標的分子と分子標的化マイクロバブルの親和性評価の第一段階として,標的分子であるアビジンのQCM上への固定を行う.標的分子は自己組織化膜を介し,QCM表面に固定される.この際,固体化されたアビジンの量はQCMにより定量化した.次に,QCM表面上にビオチン化バブルを滴下する.QCMの共振特性をリアルタイムでモニタリングすることで,アビジンとビオチン化バブルの相互作用における反応速度,バブル吸着量が評価した.
【結論】
アビジンとビオチン化バブルの相互作用下ではQCMの共振周波数が低下することを確認し,相互作用の検出が可能であることを実証した.また,共振周波数の時間変化の時定数により反応速度を,反応前後の共振周波数のシフト量より吸着したバブルの量を定量化できることも示した.さらに,吸着したバブルの数密度とQCM表面上のアビジンの量には弱い相関があることを確認した(r=0.44).これらの結果は,提案システムが超音波分子イメージング用造影剤と標的分子の親和性評価システムとして応用できることを強く示唆している.