渡辺 正毅, 本庄 泰徳, 川岸 哲也

Masaki WATANABE, Yasunori HONJO, Tetsuya KAWAGISHI

¹東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部, ²東芝メディカルシステムズ株式会社超音波事業部

¹Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation, ²Ultrasound Operating Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
生活習慣病患者の増加に伴い，脂肪肝の鑑別，早期発見が臨床的に有用である．その脂肪肝の早期発見のために，臨床では肝臓超音波画像の信号強度の減衰を1つの指標としており，その定量化を行うことは重要と考える．
一般的に，減衰を定量化する場合，関心領域内の信号強度の分布からその傾きを算出することで減衰係数を算出する．しかし，単純に分布から傾きをとってしまうと，強い反射体となる構造物が存在していた場合に，均一な背景肝と構造物の2つの間で所望な減衰係数の算出が困難である．これらの構造物を，減衰係数の算出時に除外することはより正確な値を得るために重要である．
【手法】
実験装置はAplioTM i800，探触子はPVI-475BXである．減衰係数の算出には，あらかじめ装置内に保存されている音場プロファイルを元に，実際に得られた信号強度を補正し，その分布の傾きから減衰係数を推定する手法を用いた．本発表では，上述した問題を解決すべく，構造物を除去する手法を考案し，適用前後で値にどう影響するのかをファントムを元に調査した．
まず前提として，減衰の定量化に有用なターゲットは脂肪肝のため，対象物は比較的均一なものとしている．減衰係数を算出する関心領域を設定し，その関心領域内をさらに小さな領域に分割し，その関心領域内の信号強度の局所分散値をそれぞれ算出する．この局所分散値がある一定以上の値になった場合は，構造物として見なしイメージングと計測に用いる値から除外する（構造物除去フィルター）．上記手法を，ワイヤーファントム（Gammex社製　RMI403GS減衰係数0.7 dB/cm/MHz）に対して適応し，適応前後の減衰係数の誤差の比較を行った．
【結果】
図は構造物除去フィルター適応前後のファントム比較結果である．左図（1）はワイヤーファントムのBモード画像を示す．中央図（2）-aが示すように，単純に信号強度の分布に対して減衰係数を算出した場合では，ワイヤーターゲット周辺においてファントムの真値から外れた値（誤差20％）となる．逆に，構造物除去フィルターを用いてワイヤーターゲット周辺の領域を除去した右図（2）-aでは，構造物周辺でイメージングはされないものの，よりファントムの真値に近い値（誤差6％）が算出されていることが分かる．
【まとめ】
減衰係数を定量することが出来るイメージングについて構造物除去フィルターの検討を行った．今後は，臨床での有効性を探ることが課題である．