Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
組織性状診断

(S458)

組織成分を考慮したマルチレイリーモデルに基づく肝線維確率画像の高精度化の検討

Examination of improvement of fibrotic imaging method based on multi-Rayleigh model considering tissue component

森 翔平, 大橋 穣, 平田 慎之介, 山口 匡, 蜂屋 弘之

Shohei MORI, Minori OHASHI, Shinnosuke HIRATA, Tadashi YAMAGUCHI, Hiroyuki HACHIYA

1東京工業大学工学院システム制御系, 2千葉大学フロンティア医工学センター

1Department of Systems and Control Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
我々は,病変肝から得られる超音波エコー信号の振幅分布特性が,異なる組織からの複数のレイリー分布の和で表現できることを示し,マルチレイリーモデルに基づく肝線維確率画像化手法を提案・評価してきた[1].
マルチレイリーモデルの成分数が組織成分数と一致しない場合,肝線維化パラメータは誤推定されてしまうため,マルチレイリーモデルにおける肝線維化パラメータをロバストに推定するためには組織の成分数を判定する必要がある.また,2成分組織において,組織の組み合わせが(低エコー組織+肝実質)か(肝実質+線維)かの判定も必要である.本報告では,組織成分数および組織の組み合わせ判定による線維確率画像の高精度化を目指し検討を行った.
【方法】
マルチレイリーモデル推定に使われる振幅統計量であるモーメントを用いた組織成分数の判定手法を検討した.モーメント空間では組織成分数に応じてモーメントの分布領域は変化する.そこで,実データのモーメントと各組織成分数における理論的なモーメント分布との距離を指標として組織成分数を判定した.2成分組織での組織の組み合わせは,2成分マルチレイリーモデルの各成分の信号のパワーが周囲の肝実質部の信号のパワーに近い成分を肝実質とすることで判定した.
正常肝(F0)から重度肝炎(F3)まで分類された臨床画像に対し,提案する組織成分数および組織の組み合わせ判定処理を適用した上でマルチレイリーモデルに基づく肝線維確率画像を作成・評価した.
【結果】
Fig.(a)に腹部超音波画像および自動で設定された解析領域を示す.Fig.(b)に組織成分数や組織の組み合わせを判定せずに3成分マルチレイリーモデルのみを用いて線維確率を計算した結果を,Fig.(c)に提案手法を用いて判定した組織成分数および組織の組み合わせに応じたマルチレイリーモデルにより線維確率を計算した結果を示す.線維確率は,解析領域内で0.3以上となる確率のみを表示している.
正常肝(F0)において,組織成分数を考慮することで線維確率が全体的に低下している.これは,正常肝組織の主成分数が1成分,2成分であるため,3成分マルチレイリーモデルを用いると誤推定された肝線維化パラメータが組織成分数や組織の組み合わせを考慮することで正しく推定できたためで,本手法により初期病変の推定精度向上も実現できる.
【参考文献】
[1]森他:日超医第89回学術集会,Vol. 43,S519,Apr. 2016.